NGC 5367という反射星雲を撮影しました。透明感のある星雲で、水の中を涼しげに泳ぐ鯉のようです。中央上とその右下の二つのオレンジ色の星がアクセントになりました。背景も少し暗めに仕上げることで星雲の透明度も増すことができたと思います。この天体はケンタウルス座に位置して、地球からは2,500光年離れています。
いつもは露光時間に数十時間をかけ、画像処理にも1ヶ月近くかけることもある私ですが、今回のNGC 5367の露光時間は4時間弱。画像処理も1時間で終えました。あっさり仕上げです。
しかし、これが楽しい!!
結果はとっても気に入っていて、完成してから何度も眺めています。このことは大発見でした。
今回のことで思い出したことがあります。私はミュージシャンの佐野元春の熱烈なファンです。佐野元春さんはいまなお年々進化していてすごいライブを繰り広げられており、私も年間に行くライブは7回以上。地方にも追いかけていきます。ライブ映像にちょいちょい客席から映り込んでいるのが私の最大の自慢です。新月の週末も、撮影よりライブを優先する、というとその熱量を天文ファンには分かっていただけるでしょう。その佐野元春さんが以前に「大作ばかりのアルバムは面白くない」というような発言をされていた記憶があります(出典は見つからず)。
例えば初期の名盤SOMEDAYでは「ロックンロール・ナイト」という壮大な楽曲のあとに、「サンチャイルドは僕の友達」というアコースティックギターだけによるシンプルな短い曲が収録されています。このサンチャイルドのおかげで、ロックンロール・ナイトという大作の興奮を鎮めながら、アルバムを聴き終えることができます。ギターの伊藤銀次さんはブログにこんなことを書かれています。
アルバム「SOMEDAY」のすべての録音が終わったと思ったときに、「銀次、もう1曲レコーディングしたいんだ。」と彼が切り出しました。
伊藤銀次オフィシャルブログ サンデー銀次より
「えっ、でもリズム隊はもうおさえてないよ。」というと、「大丈夫、僕のアコギだけだから。」ということで録音したのが「サンチャイルド」でした。
この曲が急遽登場したのには理由がありました。当初アルバムの最後を飾るはずだった「ロックンロール・ナイト」の余韻が思ったより重々しいものだったので、それを軽減したいという彼の配慮から生まれたのでした。
ちなみに、この佐野元春さん演奏によるアコースティックギターは、フィンガーノイズも格好良くて何度も聞いてしまいます。
ベストアルバムはつまらないものが多い。大作だけでは見る方も疲れてしまう。静かな作品、小粒だけど味のある作品も織り交ぜていこうと、しみじみ思いました。
<撮影データ>
涼しげな鯉のような反射星雲 – NGC 5367
2024年5月3日 23:54 〜 2024年5月4日 16:12
Vixen R200SS, corrector PH(760mm F3.8)
Astro-Physics 900GTO
ZWO 30mm F4ガイドスコープ, ASI120MM Mini
ASI294MM Pro
Astrodon LRGB Gen2 E-Series Tru-Balance Filters
露出
(-10°C冷却, Bin2x2, Gain 120, Offset 5)
L: 120秒x60枚
R: 120秒x20枚
G: 120秒x20枚
B: 120秒x17枚
総露光時間 3時間54分
PixInsightにて画像処理
撮影地: チリ・ウルタド渓谷リモート撮影
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