Deconvolution使用時の星雲中のリンギング抑制に続いて「銀河編」です。銀河むけのスペシャル処理というより星雲にも使えるテクニックで、進化版と考えています。前回の記事を書いてからM83南の回転花火銀河とNGC5128ケンタウルスAの二つの銀河の画像処理をする過程で、Deconvolution処理を改善させることができました。
星雲中のリンギング抑制では以下のポイントでDeconvolution処理をしました。
- Global darkを0に設定する
- Local DeringingはStarNetによるマスクを利用する
これでかなり改善したのですが、まだ問題がでてしまいました。銀河を背景にした星にリンギングが起きていたのです。黒い背景とした星のリンギングは抑制されますが、銀河をバックにした星の場合にリンギングが起きました。これはキレキレのStarNetを使ったLocal Supportでも改善しないことがあるのです。
いろいろ試してみて2つの方法で改善することができました。
銀河中の星を強調した画像をLocal Supportに使用する
最初に気が付いたのがLocal SupportのStarNet画像です。星の中でも銀河を背景にした星が、他の星に比べて暗くなっています。これによりDeringingの効果が半減したと思われます。暗くなった星を明るくするために、StarNetでできた星無し画像をマスクとしてLocal Suport用のマスクに設定します。
HistogramTransformationで強調します。
銀河が背景となっている星も濃くなりました。
この画像をDeconvolutionのLocal Supportとして設定します。
Deconvolutionを実行してみると、かなりの改善がみられます。
しかしまだリンギングが残ります。次なる策はマスクです。
L画像をマスクに設定する
銀河を背景として星が見えている部分は、銀河周辺部のそれほど銀河が明るくない部分。そのため銀河が明るくてt星がそれほど見えない部分にはDeconvolutionを強く、銀河明るさが少ない星がよく見える部分には薄くDeconvolutionをかけることができると、銀河の中のリンギングを抑制できるはずです。
私はこれまで、Deconvolutionでは銀河に効果を最大に与えるためにRangeSelectionを使ってこんなマスクをかけていました。
PixInsightのマスクは画像の場所ごとに処理の強度を設定します。このときマスクをかける/かけないのイチゼロではなく、処理強度に濃淡をつけてかけることができます。そこでRangeSelectionを使った濃淡のはっきりした画像ではなく、L画像をそのままマスクとして利用してみます。私の画像はモノクロなのでそのまま使えますが、カラー画像の方はProcessメニューのChannelExtractionでCIE L*a*b*でL画像を取り出してください。
取り出したL画像はSTFとHTを使ってストレッチします。
STFの情報のままストレッチするより、背景と天体を暗くした方がDeconvolutionのマスクとして有効でした。
できあがったマスクがこちらです。
完成したマスクをDevonvolutionする画像に設定します。
それではDeconvolutionを実行します。
リンギングはうまく抑制されています。マスクの明るさがポイントで、ちょっとした明るさの違いでも効果が変わってきます。なんどもためすことをお勧めします。LocalSupportの画像も、全体にかけるマスクも明るさなどを調整したあとは、設定しなおさなくても即座に有効になります。マスクを変更→Deconvolutionを実行を繰り返すのがコツです。
このマスク設定はリンギングだけでなく、Deconvolutionにも良い効果があります。Deconvolutionはシグナルの強い部分は強力に効かせたい一方で、シグナルの弱い部分にも強く効かせると人工的になって画像が乱れてしまいます。濃淡のあるL画像をマスクに使うことで、Deconvolutionの効かせ方に強弱をつけることができ、より良い結果を得ることができます。リンギング抑制よりよりもこちらの方に価値があったように思います。リンギングはLocal Supportを頑張れば無くなることが多いです。今回の記事でも、実はマスクに工夫しなくてもLocal Supportの画像で銀河背景の星を明るくする一つ目の処理だけでほとんどリンギングがなくなり、検証用のリンギング画像を作るのに難儀しました。しかしリンギングがなくてもDeconvolutionの処理強度をシグナルの明るさごとに変える意味で、濃淡のあるマスクは有効と思います。ぜひお試しを。