M83 南の回転花火銀河を、チリに新しく導入したAG Optical 10″iDKで撮影しました。こっちに顔を向けたファイスオンのきれいな銀河です。M83は2年前のチリ・リモートの初期に撮影した対象でもあり、個人的にとっても思い入れがあります。
この写真は周辺をトリミングしてあります。大判の印刷や大画面でみることができるときは、こちらのフルサイズを使おうと思っています。
フルサイズの方が「こんなにカラフルなものが、宇宙に浮かんでいる」感がありますね。この写真にはちいさな銀河もたくさん写っています。
情報がわかるものには、「地球から銀河までの距離」を記載しました。ぜひ高精細版の方を拡大してみてください。わかる範囲で一番遠くの銀河は、画面右下のPGC720166です。
なんと17億光年先の光。17億年前は先カンブリア時代で、地球に酸素が急激に増えたころとのことです。
画像処理の工夫
今回の画像処理では「きれい目に処理する」ことを目標にしました。前回までの写真と比較してみましょう。
進化させることができたと思っています。今回、鏡筒を変えて口径が大きく焦点距離が長くなり、またカメラをフルサイズに変更しました。このような機材上の進化に加えて、画像処理もやり方を工夫しました。気をつけたのは、下記の3点です。
- 光芒はあきらめる
第一にこれです。M83のまわりにぼや〜っとした光芒が広がっています。銀河のアウターハローです。やっぱりこの光芒を強調したくなります。ぶっちゃけ私の2023年ゴールデンウィークはこの光芒をきれいに出すために費やされたといっても過言ではありません。しかし・・・光芒出すとなんだかきれいじゃないんですよね。M83の清らかさが失われてしまいます。光芒は清くあきらめましたw - カラーバランスに気を配る
まんなかの2022年12月版(別名クリスマスバージョン)は、このときは上手に処理したつもりでした。しかし遠目にみてみると、ちょいと赤が強くて青々しい銀河の印象が薄れています。Hαの赤ポチを強く入れすぎた問題かもしれません。今回のM83は青と赤のコントラストがうまくいったように思います。 - 銀河の腕にコントラストをつける
銀河の腕を中央部は濃く、周辺部は薄くしました。もともとの画像もそのような濃淡になっているのに加えて、少し腕の濃淡を強調気味にしています。すると2021年、2022年版ではフラットな円盤にみえていた銀河が、2023年版では中央が盛り上がった立体感が出てきたように思います。
いかがでしょうか。M83 2023年版。まだ進化はつづきます。
ちっこい銀河たち
この記事を公開してから、だいこもんより「ハローの描写をあきらめたことが、矮小銀河の美しさに貢献している」とのコメントをいただきました。ありがとうございます。早速、ちいさな銀河たちをクローズアップしてみましょう
・・・ん?この作業、既視感があります。最初のM83のときも同じようなコメントもらったような・・・やっぱり。こちらの記事をみると「だいこもんさんが『矮小銀河が描写されている』とおっしゃいます」と書いてあります。2年前から同じやりとりしてますね。
(5/21追記) その後・・・光芒について
この記事を書いたときには「きっぱりと諦めた!」と言い切った光芒。結局、だしてしまいました・・・こちらの記事をご参照ください。画像データも新しいものに差し替えています!
<撮影データ>
きれい目に仕上げました。M83 南の回転花火銀河
2023年3月23日 〜 4月23日
AG Optical 10″ iDK (250mm, F6.7)
Astro-Physics 1100GTO-AE
オフアキシスガイド ASI174MM Mini
ASI6200MM Pro
CHROMA LRGB, Hα Filters
露出(すべて-10°C冷却, Bin1x1, Gain 100, Offset 50)
L: 300秒x360枚
R: 300秒x133枚
G: 300秒x125枚
B: 300秒x123枚
LRGB 露光時間 61時間45分
Hα: 300秒x731枚 (60時間55分)
HαLRGB 総露光時間 122時間40分 (ただしHαの60時間は赤ポチのみに使っています)
PixInsightにて画像処理
撮影地: チリ・ウルタド渓谷リモート撮影
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