ジャケ買いで新機器投入!

2020年に天体撮影を始めてから、広角のBORG 72FLとポータブル赤道儀のSWAT350で運営してきました。日本やチリでいろいろな機材で写真が撮影していたのは、すべて友人にお借りしたものです。しかしご好意に甘えてばかりもいられません。一昨年くらいから、じわじわと新しい機材を検討はじめていました。いまの機材が、焦点距離400mm(レデューサーをつけて288mm)のBORGと1軸ポータブルのSWATですので、拡張として狙っていたのは、焦点距離が1000mm台の鏡筒と2軸駆動の赤道儀です。

そしてじゃーん。検討開始から2年。ついに買いましたー。

昔から「買う買う」といってなかなか買わない私。買う時は一点豪華主義です! 

鏡筒はAG Optical 10iDK。口径10インチ、焦点距離1674mmのドールカーカム。赤道儀はAstro-Physics 1100GTO。エンコーダー付きです。カメラはフルカラーのASI6200MM、フィルターはChromaにしました。当初は日本で使うつもりで輸送の手配もしていましたが、ギリギリになって心変わりしてチリに設置することにしました。

さらにAskar ACL200とASI2600MCが小亀として載っています。

後ろから見るとかっこういい。鏡筒には大きなOptecのGeminiフォーカサー&ローテーターがついています。

実際に使うときはトラスがむき出しではなくてカバーをかけています。

カバー付きもこれはこれで、なかか良い感じです。

まずは赤道儀を発注

最初に決めたのは赤道儀でした。2019年の皆既日食でチリに行った時に、初めて見た天体写真撮影用の本格機材がAstro-Physics 900GTOとTakahashi FSQ-106Nでした。そのときからAstro-Physicsには淡い憧れがあります。また日本でも知人からAstro-PhysicsのMach1をお借りして使っており、その質実剛健さに感銘をうけたのです。

Astro-Physicsのフォーラムになんどか質問したところ、創業者のRolandさんが何度も直接回答をしてくださったのも、決め手になりました。そういうのに弱い私。Astro-Physics社は家族経営のようです。

この赤道儀の特徴のひとつはRAモジュールとDECモジュールが分離できること。耐荷重は50kgで、マウントの重量は20kgありますが、分離して持てるなら運びやすいし設置もしやすい。「遠征に使えるかも」と考えました。Astro-Physicsのフォーラムで聞いても、「まったくもってポータブル」「遠征には超おすすめ」とみんな推薦してくれました。しかし現地でみてみると・・・

アメリカ人が言う「ポータブル」は信じてはいけません。チリに送って正解でした。

Astro-Physicsの問題は納期です。予約は2年弱前の2021年の6月にしましたが、待てど暮らせど返事はきません。そうこうしている中、昨年末に「Niwaさん。ほぼ新品の1100GTOが1台あるけど買うか?」と言われ、「買う買う!」と飛びつきました。カナダの方が購入したものの、都合により使わなくなり余ったのだそうです。不思議なもので中古を買う約束をしたその日に、Astro-Physicsからも「予約した1100GTOがオーダーできます」と連絡がありました。この連絡メールをファンの中ではゴールデンメールと呼ばれています。1年半まっても手に入らないものが、同じ日に2台くるとは不思議です。

結局、中古のオーナーの方に約束したことや、ほぼ新品ながら新品より少し安くしていただけるので、そちらを購入しました。

鏡筒はジャケ買い

鏡筒はAG Optical 10 iDK。カーボンファイバーのチューブが特徴的なトラス構造のF6.7(焦点距離1674mm)のコレクテッドドールカーカムです。主鏡は10インチ(25cm)のfused quartz opticsで、温度変化に強いとのことです。

AG Opticalの鏡筒はAstrobinで知りました。「この写真、綺麗だなあ」と思って確認したらAG Opticalで撮影したものだったのです。AG Opticalのホームページを見てみると・・・

「おお〜、かっこういい」

ネットで調べたところ、ユーザはみんな幸せそうなコメントをしています。問題は、私を含めて周りに実物を見た人がいないこと。チリの友人に聞いても、見たことも触ったことのないそうです。

とりあえず問い合わせしてみました。どんな質問をしても、たいがい2時間以内にオーナーにDaveさんから回答が来ます。AG OpticalはどうもDaveさんがほぼ個人でされているメーカーのようです。Daveさんに質問すると、いつも

「私はこういう使い方をしているよ」
「私はこんなセッティングだよ」

という言い方で返信が返ってきます。つまり自分が一番詳しいユーザーという目線。製品への愛を感じました。この感じはSWATのユニテック加曽利さんに既視感があります。こういうものづくりをしているところは信頼できる。ほとんど情報がないまま、見た目とオーナーの人柄で決めてしまいました。いわばジャケ買いです。

納期は数ヶ月とのことでしたが、こんなご時世ですので部品が入手できないなどの理由で、結局1年待ちました。

「カーボンファイバーチューブなど主要構造部品が到着した」
「いま主鏡を磨いている」
「粗削りは終わり、いま精緻にグラインドしている」

など細かい状況を聞きながら、楽しみながら待つことができました。

開封シーンも撮影しました。浮かれています。

準備ができて、いよいよ撮影です。

ファーストライト

M83南の回転花火銀河が良い位置にあるので撮影してみました。Luminance、300秒のイメージで、フラット、ダークなどのキャリブレーションや加工なしです。


2023年3月23日 11:52:02
AG Optical 10″iDK
Paramount ME
ASI6200MM Pro
CHROMA L Filter
ASI174MMにてオフアキオートガイド
露出(-10°C冷却, Bin1x1, Gain 100, Offset 50) 300秒
撮影地: チリ・ウルタド渓谷リモート撮影
#observatorioelsauce

あれま、四隅が暗くなってしまいました。この鏡筒からはM54のチューブが出ているのですが、オフアキをつなぐところでM48のアダプターを使ってしまい、周辺の光が一部遮断されたのが原因と思います。

星像は大丈夫そうです。右上の星が少し伸びているので、チルト調整をするとより良くなりそうです。それはM54のアダプターに付け替えたときにやろうと思います。

そして手元に残ったのが・・・

今回、メーカーからの出荷のギリギリになって、発送先を日本からチリに変更しました。しかし一つだけ間に合わず日本に来てしまったものがあります。

Astro-Physicsの赤道儀用にと発注していたピラーです。これ、どうすんねん。今は某所に隠してあります。

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