渦巻銀河と取り巻く潮汐シェル 〜 NGC 7531

渦巻銀河と取り巻く潮汐シェル – NGC 7531

地球から7000万光年ほど離れた場所にある渦巻銀河 NGC 7531を撮影しました。銀河の右手に広がる三日月状の白い雲がわかりますでしょうか。これは潮汐シェル(tidal shell)という天体で、矮小銀河(dwarf galaxy)と呼ばれることもあります。正式にはPGC 70787という名前があります。

白い雲の正体はたくさんの星々です。数億個程度の星の集まりのようです(最後にそう考えた根拠を記載しました)その昔、もっとしっかりした形の銀河が中央の銀河NGC 7531の周りを回っていて、時を経て中央のNGC 7531の重力による潮汐効果で形がくずれていったのものと予想されています。潮汐効果は地球と月の重力によって潮が満ち引きでも見られます。というか語源は潮の満ち引きでしょうね。我々の天の川銀河の周りにある大小マゼラン雲がちょっと崩れた形なのも、天の川と大小マゼラン雲どうしの潮汐効果です。

潮汐効果が観測できる大きな天体としては、以前に撮影したNGC 1097という銀河で潮汐ストリームという星の流れが見られました。これは近傍の銀河などの影響で星が流れ出しているという説と、今回のように以前は銀河であったものが潮汐作用で崩れたという説があるようです。

以前に撮影したNGC1097のドッグレッグ状に折れ曲がった潮汐ストリーム(恒星ストリーム)

潮汐シェルや潮汐ストリームは、以前は大きな天文台でも撮影が難しかったようですが、最近のセンサー性能の向上で、我々にも撮影ができるようになりました。

また冒頭の写真は銀河を拡大するために周辺をトリミングしています。トリミングなしの広角なバージョンはこちら。

トリミングしないより広角のバージョン

右下の方に銀河が3個写っています。

上からリングを持った銀河PGC70669、渦巻銀河NGC7496、楕円銀河PGC 70684です。地球からの距離はそれぞれ4億7000万光年、7400万光年、13億光年。一番上のリングの銀河はとてもはっきり写っています。4億光年以上の銀河でこれほどはっきり形が写っているのはあまりないのでちょっと感動です。

よくみると小さな銀河がたくさん写っていますね。

(補足) 潮汐シェルの星の数

記事の最初の方で潮汐シェルの星の数は数億個程度と書きました。そう考えた根拠は次のようなものです。

こちらの論文によると潮汐シェルの星質量(stellar mass)は3〜11億となっています。銀河の星質量とはダークマターなどを除く星の質量の合計です。つまり潮汐シェルの質量は太陽換算で3〜11億個分です。そのため潮汐シェルの星の数を数億個としました。ちなみに天の川銀河の星の数は2000〜4000億個、星質量は500〜600億程度です。

この論文に書かれていることは面白いです。今回撮影したシェル上の潮汐残骸(shell-like tidal debris)の中心に超コンパクトな矮小銀河(ultra-compact dwarf galaxy – UCD)がみつかったそうです。その質量は潮汐シェル全体の1/100程度です。そしてこの発見はアマチュア望遠鏡の長時間露光によるものだそうです。DESI Legacy Imaging Surveyでも不明瞭だった領域をクリアにしたそうです。宇宙はめっちゃ広いことと機器が高性能化してきたことで、アマチュアが科学に貢献できる時代なんですね。

なんで私がこんなマニアックな論文をみつけることができたかというと・・・Geminiのおかげです。いろいろ聞いていたら見つけてくれました。

<撮影データ>
渦巻銀河と取り巻く潮汐シェル – NGC 7531
2025年8月27日 〜 2025年10月26日
AG Optical 10″ iDK (250mm, F6.7)
Astro-Physics 1100GTO-AE
オフアキシスガイド ASI174MM Mini
ASI6200MM Pro
CHROMA LRGB, Hα Filters

露出(すべて-10°C冷却, Bin1x1, Gain 100, Offset 50)
 L: 300秒x299枚
 R: 300秒x109枚
 G: 300秒x120枚
 B: 300秒x92枚
総露光時間 17時間35分

PixInsightにて画像処理

撮影地: チリ・ウルタド渓谷リモート撮影

#observatorioelsauce

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