
南半球の代表的な星座、南十字星です。
南十字星は、天の南極の周りをぐるぐる回っている星座で、北半球の北極星に対するカシオペア座や北斗七星に相当する位置にいます。ほとんど一年中見ることができる星座ですし、オリオン座級の明るい星座ですので、市街地からでも見ることができます。南半球に旅行に行った時は、かならず見てきて欲しい!というか見ないともったいない。すぐ近くに「にせ十字」もありますので、お間違いのないように。本物の南十字星は、十字の短い方の先にアルファ・ケンタウリ、ベータ・ケンタウリという明るい星が二つあるので、それを目安にすることができます。ちなみにアルファ・ケンタウリは地球に最も近い恒星で、よくSFに出てきますね。
十字の左側の青い星ミモザの脇に赤い星があります。

チリの天体仲間の話では「血の一滴(Gota de Sangre)」と呼ばれていて、望遠鏡で見ると本当に真っ赤で感動するそうです。
左下の黒い領域はコールサック(石炭袋)です。宮沢賢治の銀河鉄道の夜に登場しています。旅の最後にサウザンクロス停車場を出て、カムパネルラが「あ、あすこ。石炭袋だよ。そらの孔だよ」と表現しました。それを受けて、ジョバンニが孔の深さにぎくっとします。チリの観測所からは肉眼でコールサックを見ることができました。濃く白い天の川のそこだけが黒くなっていたのを覚えています。コールサックの正体はガスやちりなどからでできた暗黒星雲です。光を通さないので黒く見えるのです。コールサックではなくとも天の川の暗黒星雲は、日本からもいて座付近の暗黒星雲を肉眼でみることができて感動した覚えがあります。暗いところで目が慣れてくると、天の川のいろいろな形をみることができます。
背景のもやもやした雲のようなものは、天の川の星々です。

すごく星がいっぱいあります。肉眼でみるとボーッと白い天の川も、望遠鏡でみると星をたくさん見ることができます。双眼鏡でも見られますので、双眼鏡をお持ちの方はぜひ天の川にむけてみてください。
ところで、ブログを書いていて初めて知ったのですが、南十字星は最も小さい星座だそうです。それにしては存在感がとてもあります。いつも見ているいるか座より大きいと思っていましたが、いるか座の1/3程度のとても小さい星座でした。
<天文ファンへの追伸>
総露光時間に「どんな意図があるの?」と思われた方がいらっしゃるかもしれません。メインの望遠鏡を整備している期間中に、サブで撮影していたらこんな長時間になりました。おかけで星のハロがどーんと広がって星座の写真として見応えが出た気がします。背景の構造もよく出たかも。
<撮影データ>
2025年4月29日 〜 2025年5月25日
レンズ: Askar ACL200 (焦点距離200mm、F4)
カメラ: ASI2600MC Pro (-10°C冷却)
オフアキシスガイド: Astro-Physics 1100GTO-AE, ASI174MM Mini
パネル1: 300秒 x 335枚 (27時間55分)
パネル2: 300秒 x 329枚 (27時間25分)
総露光時間: 55時間20分
撮影地: チリ・ウルタド渓谷リモート撮影
#observatorioelsacuce