(2023.6.15記載)
星を小さくする技術は日進月歩で、現時点では、だいこもんさんが記事を書かれた下記リンクの手法がベストです。私もこちらを使っています。本記事は記録のために残しておきます。
https://snct-astro.hatenadiary.jp/entry/2022/08/16/231342
https://snct-astro.hatenadiary.jp/entry/2022/08/18/171141
星雲を強調したいときなどに、星を小さくしたいときがありますよね。PixInsightでは多くの手法が考案されていますが、その中でも評判の良いのがAdam Blockさんが編み出したDe-Emphasisという手法です。星を小さくするには、MorphologicalTransformationのErosionを使うこともできますが、問題は星の周りに痕跡が残ることがあること。小さくしたのがバレるというわけです。De-Emphasisは、ドーナッツ型のマスクを作って星の周りに近い画像を使って埋めていくことにより、人工的な跡を少なくします。
ちょっと処理ステップ数が多いのですが、なんと一連のステップを自動化してくれるスクリプトが登場しました。その名もEZ Star Reduction。このスクリプトは、ハッブルパレットの記事で紹介しましたが、とても便利なので改めて単独の記事にしました。
EZ Star Reductionをインストールする
EZ Star ReductionはPixInsight開発チームが管理しているスクリプトではないため、利用にはインストールが必要です。インストール方法は簡単です。
- Resources – Updates – Manage Repositoriesメニューを実行
- Addボタンをクリック
- “https://darkarchon.internet-box.ch:8443/”を追加
- Resources – Updates – Check for Updatesメニューを実行
- https://darkarchon.internet-box.ch:8443/を選択しApply
- いったんPixInsightを終了し、アップデートを実施
くわしくはこちらのサイトに記載があります。EZ Processing Suiteは他にもNoise Reduction、Deconvolution、Stretchなど多くの機能があります。他も検証していますので何かわかったらまた報告します。
またEZ Star Reductionを使用するにはStarNetがインストールされている必要があります。まだインストールしていないかたは、こちらの記事の最後を参照してStarNetをインストール下さい。
EZ Star Reductionによって星を小さくする
今回は薔薇星雲のSII画像の星のサイズを小さくしてみます。
Hα、OIII画像に比べて星が肥大化してしまいSAO合成では赤ハロの原因になりました。これはモノクロ画像ですが、もちろんカラー画像でもスクリプトの適用は可能です。処理はストレッチ済み画像に対して実行します。
まずScript – EZ Processing SuiteからEZ Star Reductionを起動します。「絶賛開発中なので、実行前にかならず保存してね」という警告の後に次のウィンドウが起動します。
ここで対象となる画像を選択し、Create Star Mask for reductionを実行します。
マスクが生成されたらAdam Blocks De-Emphasisメソッドを選択し、実行します。
すると星が少し小さくなった画像が生成されます。
ぱっと見はわかりにくいですが、確かに小さくなっておりハッブルパレットの例では赤ハロ削減に成功しました。これくらいがちょうど良いのではないでしょうか。
どんな処理をしているか?
今回はEZ Star ReductionのDe-Emphasisという手法を使ってみました。最後に、どのように星を小さくしているかみてみましょう。ものすごいアイデアです。
まずCreate Star Mask実行するとStarNetで星を消した画像を作成します。この星を消した画像がミソで、消した星の周辺部を埋め合わせるのに使用します。
次にもうひとつStarNetで作成した画像である星マスクに対して、(1)MultiscaleLinearTransformとBinarizeを実行し星を少し小さくします。またその画像のクローンに対して(2)MorphologicalTransformationをDilationで実行して今度は星を肥大化させます。これで小さい星(1)と大きな星(2)の画像ができあがります。この際にConvolution処理でエッジをスムーズにします。ここで大きな星(2)から小さな星(1)をPixelMathで引くことで、ドーナツ状のハロだけを作ることができます。
このドーナツ状の画像を元の画像に設定することで、星のハロ部分のみ処理がかかるようにします。ここでPixelMathで元の画像を星無し画像に差し替えると、ドーナツ部分のみが星無し画像に置き換わり、星のハロ部分が削減されるわけです。
今回のスクリプトでは星の大きさはコントロールできませんが、オリジナルのDe-EmphasisではMorphologicalTransformationをDilationのSizeを変更することで、消す星の大きさを変更することが可能です。英語ですがこちらのYouTube動画に解説があるので、興味がある方はご覧ください。
いや〜、この手法を考えたのも、これをスクリプトにまとめるのも、両方ともすごい!使える我々は感謝ですねぇ!!
ちょっとインチキな気もしましたが、もともと星は点像。色も位置も変えていない。再現性もある。なので、星を画像処理により小さく表現するのは、ありだと思いました。
喜びの声・・・
記事を公開したところ、各所から喜びの声が届いてまいりました。私の画像より効果がわかりやすいです。
あちこちで奇声があがっているようです。
(2021.8.16 追記)
便利なように見えたEZ Star Reductionですが、星の周りに痕跡が残るなど課題も見えてきました。もう一手間かけて良い方は、オリジナルのDe-Emphasisも試してみてください。コントロールが効きやすく、より高い品質のイメージを得ることができると思います。