天文ガイド2021年4月号に寄稿しました 〜 2020年南米皆既日食

楽しみにしていたけれど行くことが叶わなかった2020年12月のチリでの皆既日食。せめて、ということで現地情報を集めて天文ガイドに寄稿しました。レポートはチリ在住のカルロス・カンポ、エドアルド・ラトーレと私の3人で書きました。でも実はこの3人、皆既日食を見逃しています。COVID-19に加えて、皆既日食が起きるチリ南部は年間降雨量の多いところ、さらにはビラリカ火山活動の活発化の3重の壁に隔てられた今回の皆既日食。幸運を手に入れたごくわずかの人の一人から動画をもらって記事化しています。

エドアルドは皆既日食の現場には行けませんでしたが、チリ北部で部分日食のオンライン中継をしてくれたので、私も日本で楽しむことができました。

部分日食のZoom中継
部分日食のZoom中継

チリ皆既日食の観測は1年前から企画をしていました。南部のビラリカ火山付近は宿泊施設があまりありません。12月はチリの夏にあたるのでテントキャンプを準備していました。日本からも私の友人を連れて行く予定だったこともあり、とても無念ですがまたの機会を狙いたいと思います。

素晴らしいチリの星空と友人との出会い

カルロスとエドアルドとは、2019年のチリ皆既日食で出会いました。

2019年の年明けになんとなく手にした雑誌に記載されていたその年7月の南米皆既日食。心に引っかかり、一生に一度くらい見ておこうとチリ行きを決意しました。

私は宇宙は大好きで、それまで望遠鏡で観望はしていましたが、星空の写真を撮ったことがありません。しかしせっかくのチリ旅行なので、私にとって初めての一眼カメラを購入して旅立ちました。皆既日食は泣けるくらいの感動。さらにもうひとつ私を魅了したのがチリの美しい星空です。下の写真はまだ撮影技術を持っていなかった私が、固定撮影で30秒露出した天の川。ほとんど撮って出しです。

サボテンに挟まれた南十字星
サボテンに挟まれた南十字星

Lightroomで少しだけ露光量を増やしをましたが、それ以外は手を入れていません。サボテンはネットで知ったテクニックで光を一瞬当てています。こんな星空から天体撮影をスタートしたのは、ちょっと不幸かもしれないです。「星を撮るのなんて簡単!」と大きな勘違いをしてしまいました。

宿泊した施設にはアマチュア天文家が運営する小さな天文台があり、そこで出会ったのがカルロスとエドアルドです(天文台の写真は嬉しいことに天文ガイドのビギナーコーナーに掲載されました)。彼らはふだんから天文台で撮影をしていますが、2019年の日食は奇跡的に天文台の頭上でおきたのです。カルロスは情熱的な人で(というか、天文ファンはみんなああいう風だと後で知りました)、カメラに興味を示した私に「望遠鏡を使った撮影は楽しいぞ」としきりに勧めてきました。エドアルドは私から見ると天才エンジニア。何でも作ってしまいます。

チリの友人エドアルド(左)とカルロス(右)

カルロスは私に「天体写真ははPixInsightを使うんだよ」と紹介してくれた人です。とりあえず帰国後に購入しました。私は天体撮影を始めるより半年前にPixInsightだけ買っていたのです。最初に天体グッズを買ってしばらく放置した人はいると思いますが、PixInsightから買って放置した人はあんまりいないのではないでしょうか。

カルロス、エドアルドと私は、AstroCHL2JPNというチームをつくり帰国後も頻繁にやり取りをしています。今回の天文ガイドの寄稿は二人が皆既日食の現場で撮影された動画を入手したことから記事化に至りました。

2021年12月4日には、3年連続となるチリでの皆既日食がチリ南端の南極圏で観測することができます。しかし科学者や南極観測隊員でない限りは行くことは難しいようです。その次のチリの皆既日食までは2048年12月5日まで待たねばなりません。でも、その前に2035年9月2日に日本で皆既日食を観測できますね。いまから楽しみです。

<撮影データ>
サボテンに挟まれた南十字星
2019年7月3日23時59分30秒~
Fujinon XF8-16mmF2.8 R LM WR (f10mm F2.8)
Fujifilm X-T30 (ISO 3200)
LEE ソフト#3フィルター
露出30秒
Adobe Lightroomにて画像処理

撮影地: チリ・ウルタド渓谷

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