PixInsightの前処理を自動化するWBPPの新バージョン、WBPP 2.5が2022年9月9日にリリースされました。WBPP 2.5はものすごい進化をしています。
私はWBPPには2つの不満があり、これまで全自動とはせずにCalibrationまでWBPPを実行して、途中からはWBPPを使わず手動で実行していました。不満とは下記の二つです。
- 進捗状況がわからない
- パラメーターを変えると最初からやりなおし
1の進捗状況はそれでも我慢すればよいのですが、2は致命的でWBPPを実行し直すと最初のCalibrationからやり直しで、非常に時間がかかってしまったのです。この2点がWBPP 2.5では見事に解決しています。Execution Monitor(進捗モニタリング)とCaching System(ファイルの再利用)です。
Execution Monitor (進捗モニタ)
これまではWBPPを実行すると途中経過がわからず、コンソール画面をにらみながら「いま、この辺だろう」と想像するしかありませんでした。WBPP 2.5では進捗状況をモニタしてくれます。
WBPPを実行すると下記の進捗モニタ画面が起動します。
WBPPの一連の処理はPipelineと呼ばれます。Pipelineとはまさに石油やガスのパイプラインのイメージで、順に処理される工程を指します。このモニタが滅法便利なんです。全体工程のどこをやっているか一目瞭然ですし、処理しているフレーム数も簡単に確認できます。
Caching System (ファイルの再利用)
私が思うWBPP 2.5の本命機能はこちらのキャッシュです。従来WBPPは実行すると最初から全ての処理をしていました。そのため「ちょっとStar Alignmentのパラメーターを変更して実行しなおしたい」というときでも、時間のかかるCalibrationやイメージの評価をやり直す必要がありました。時間がかかることが不満であり、私はImage Calibration以降の処理は手動で実施していました。
WBPP 2.5では、Calibration、Registrationなどの中間ファイルは使えるものは再利用してくれます。たとえばStar Alignmentのパラメータを少し変更して、WBPPを実行し直してみましょう。
すると、このようにCalibraion工程は再利用できるとして、スキップしてくれます。
パラメーターの変更ではなく、Lightファイルの選別し直しでも有効でした。処理をしているうち、いくつかのLight画像のクオリティに問題があり、それらファイルを除外したいと考えることがあります。そのときLightタブで不要な画像ファイルを削除(Remove Selected)して実行し直すと、Integrationだけをやり直してくれました。一つ注意点があります。ファイルを削除後にそのまま実行するとLocal Normalizationでエラーになってしまいました。いったんWBPPを終了して起動し直すと正常に動作しました。
WBPP 2.5のインストール方法
WBPP 2.5はPixInsightの新バージョンではなく、ひとつのモジュールアップデートとして提供されます。Resources – Updates – Check for Updatesを実行して、表示された画面でApplyすることでバージョンアップが可能です。
今回のバージョンアップでWBPPを使わない理由は無くなったように感じます。ぜひ活用ください。
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