遠征派に福音!? 画像選定のびっくり新常識。〜 PixInsightの画像処理

私は驚いています。それは画像選別のこと。PixInsightの最新の画像重みづけロジックを使えば「品質の悪い画像も積極的に採用することで、全体の品質が向上する」ようなのです。この新常識?は、撮影時間に制約のある遠征派にはグッドニュースになりそうです。

私はこれまでBlinkでまず画像選別をしたあと、WBPPでCalibrationまで実行し、そこでいったん止めていました。その後、Subframe Selectorを使ってSN比、星の大きさ(FWHM)、星のいびつさ(Eccentricity)を測定し、品質の悪いデータを手動で除去していました。しかしそれではせっかくWBPPを使っているのにCalibration以降はマニュアルで実行する必要があります。なにか良い方法はないかPixInsightのフォーラムで聞いてみました。PixInsightのフォーラムはPixInsightの内部の方が運営しているので、回答の信頼度高いです。

するとびっくり回答が来ました。要約するとこうです。この議論は途中から、大御所のAdam Blockも参加しアドバイスくれました。

  • 強力なPSF Signal Weightという重みづけロジックが働くので、手動で品質の悪い画像を排除する必要はない
  • 最初にBlinkを使って、本当にひどいガイドエラーや厚い雲に覆われた画像を排除することは意味がある。
  • SN比が低い画像もシグナルは存在するので、淡い天体などの品質向上には寄与するので、積極的に採用すべき
  • ガイドエラーなどで星像が延びたり肥大化している場合も、枚数が少なければ混ぜて良い。ピクセルリジェクションの機構が働くので、星像は悪化しない
  • WBPP 2.5では、排除すべき画像の自動選別プロセスも実装されている
  • 新しいPSF Signal Weightの重みづけロジックは薄雲も考慮する。薄雲のときに誤ってSN比が高いと判断することはない。だから薄雲の画像も使用できる
  • 品質の悪いデータを削除するのは、old-school(時代遅れ)だぜ!
Subframe selection processes
Hi. I would like to know when you select good subframes and remove subframes with low quality . My flow is as follows: 1...

確かにインテグレーションすると、星が丸くなるのは経験済みです。ここでは議論されませんでしたが、薄雲通過による輝度勾配の変化もLocal Normalizationで対処できるかと思います。

早速実験してみました!

実験の結果

次のような良いデータと悪いデータを用意しました。

インテグレーションした良いデータと悪いデータ
インテグレーションした良いデータと悪いデータ

左が良い画像、真ん中は薄雲もしくはガスのせいで星の周りにハロが出ている画像、右はSN比が低い画像です。真ん中と右のような画像はこれまでの私は除去していました。

今回、良い画像を24枚、悪い画像を6枚用意しました。露光時間はそれぞれ300秒(5分)です。結果はこちら。

インテグレーション結果の比較
インテグレーション結果の比較

左上の銀河(NGC 6822)のシグナルが強くなっています。またこの辺りは分子雲が多い領域で、今回はそれを狙いました。分子雲も濃くなっているようです。心配した星のハロも影響は出ていません。

ピクセル除去された情報を確認するためにリジェクションマップも見てみましょう。

ハロが除去されている

星の周りのハロが除去されているのがわかります。

これまで「心を鬼にして除外する画像が多ければ多いほど、最終品質が上がる」と考えていた私には驚きの結果です。採用することができる画像は多い方が、心の平穏にも良いですね。しばらくこの方法を続けてみます。

だいこもんによる検証

星沼会の友人である、だいこもんも検証されています。

かなりひどい状態の星の画像も大胆に採用して、インテグレーションされています。結果は、私の実験以上にびっくりです。これほどの状態の画像も採用しているのに、ノイズを減らしながら、星像の肥大化は最小限にとどめています。今回は実験のために全部の画像をインテグレーションされていますが、実際の画像処理のときはあまりにひどい状態のものは除外すると、星像肥大を完全になくしながらノイズも減らすことができそうですね。「遠征がますます楽しくなる」とは面白い視点だと思いました。私は画像処理にばかり目が行っていましたが、確かに遠征でのトラブルにも気が楽になりそうです。

ハロに注意!

この記事を書いてからの追記です。調子に乗って薄雲でハロが出ている画像を全部使ってインテグレーションしたところ、青いハロが輝星の周りにでてしまいました。

ハロを消すことができていない

中央下の輝星の周りに青くハロが出てしまいました。Pixel Rejectionで完全にハロが取り切れる訳ではないようです。枚数が少なければ良いのかと思いましたが、今回はBフィルターの良画像148枚に対して、8枚のハロ画像を追加して発生してしまいました。混ぜたのは5%未満の枚数ですが、Pixel Rejection処理は画像枚数に対してではなく、ピクセルごとの輝度の中央値から外れ値に対する統計処理です。そのため少ない枚数でもハロが含められてしまう可能性があります。薄雲通過のときのハロについては、Blinkで目で見て除外するのが良さそうです。

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