今回は、M8干潟星雲(左側)とM20三裂星雲(右側)です。黄色い紅葉の中にお花が咲いているイメージで仕上げてみました。
6月にアンタレス近くの球状星団を撮り終えたときのこと。もう一度、サソリ座の星雲を撮影しようと構図を検討していたとき、チリのエドアルドからチャットが入りました。
「丹羽さん、M20を撮ってくれないか?」
M20とは三裂星雲のこと。以前に撮影していて、もう一度、撮り直してみたかったそうです。彼はAstroCHL2JPNチームの屋台骨。他ならぬエドアルドからの頼みとあれば、二つ返事です。三裂星雲は、私としても初めて写真で見たときに「こんな奇跡のような色合いの星雲があるのか」と感動した思い出があります。ぜひ撮ってみたいと思いました。この三裂星雲の奇跡の赤と青はともに近くの恒星の力で光っています。赤い方は星のエネルギーによって電離したガスから出る光で星雲自らが放つ光。輝線星雲といいます。一方の青い方は反射星雲で、文字通り星の光を分子雲が反射しています。
すぐ近くには明るいM8干潟星雲がいます。せっかくなので一緒に撮影することにしました。干潟星雲は、撮影を始め出した頃、横浜自宅のベランダから初めて撮影に成功した、これまた思い入れある天体です。二ついれるとカメラをはみ出してしまうので、二つそれぞれ撮影して合成して一枚に仕上げています(モザイクといいます)。
赤青の三裂星雲の右上にM21というきらびやかな散開星団もいます。このあたりはにぎやかです。では萌えポイントにいってみましょう〜。
萌えポイント1 – ちっこい反射星雲
そんな私の萌えポイントはここ。
干潟星雲のちょっと上です。見つかりましたか? 最初、撮影に失敗して変な光が入ってしまったのかと思いましたが、他の方の写真にも写っています。調べたところIC 4678という名で、青い反射星雲と左上の暗黒帯に向かって飛び出している赤い輝線星雲などから構成されています。「かわいいなぁ、いつか長焦点で撮りたいなあ」と思っていたところ、びっくり。NASAのサイトのPicture of the Day (Astronomy Picture of the Day)にも選ばれていた立派な天体でした。
こういうのが好きな人はどこにでもいるんですね。
萌えポイント2 – 三裂星雲のジェット
またしてもジェットです。三裂星雲にはハッブル望遠鏡で撮影されたジェットがあります。Wikiによれば若い原子星から発せられたジェットで0.75光年に及ぶとのこと。
私の写真にも写っているでしょうか?
う・・・かろうじて写っているようです。おわかりになりますか?画像の向きはハッブルとは逆です。中央の山から右上に伸びているのがそれだと思います。これも長焦点でじっくり撮ってみたいですね。
萌えポイント3 – 暗黒帯に映える青いもやもや
次の萌えポイントは・・・ご同輩(?)のぐらすのすちくん。「ぼくはここが好きですね」と示してくれた場所がここです。
干潟星雲の右上の端です。「赤のふちに青があるので暗黒帯が映える」のだそうです。銀河撮りの名手kさんからも「M8の周囲のガスが僅かに青いんですよね」と好印象。反対側にもあります。
玄人好みです。
萌えポイント4 – 天の川の黄色に印象的な青い星ぼし
最大の見どころはここ。
天の川の黄色の背景に、青いつぶつぶの星ぼしが綺麗です。右の方には散開星団M21も見られます。盟友だいこもんさんとkさんも「天の川の中の青い星の存在感」を推してくださいました。
以上、萌えポイントでした。
あれ干潟星雲と三裂星雲はどこいった? もう紅葉とかお花とか関係ないじゃん・・・
<予告>
今回の画像処理は工夫したこともあり、近日中に説明の記事を書きます〜。
<撮影データ>
M8干潟星雲とM20三裂星雲 – Photo by AstroCHL2JPN
2021年7月7日 〜 8月14日
Takahashi FSQ-106N (530mm, F5)
Takahashi EM-200
ASI1600MM Pro
Baader LRGB, Hα Filters
Autoguide – QHY5L-IIM / Baader Vario-Finder 60mm
M8 露出(すべて-20°C冷却, Bin1x1)
L: 300秒x199枚
R: 300秒x60枚
G: 300秒x62枚
B: 300秒x58枚
M20 露出(すべて-20°C冷却, Bin1x1)
L: 300秒x204枚
R: 300秒x65枚
G: 300秒x63枚
B: 300秒x57枚
モザイク合成 LRGB総露出時間 64時間
PixInsightにて画像処理
撮影地: チリ ウルタド渓谷(リモート撮影)