ケンタウルスAの処理もおわり、新月でやることもないしポチりたくなってもいけないので、マンガでも読もうとまったりしていたところ、天リフ編集部のリツィートが目に止まりました。
すげえ。天リフ編集長はコメントをつけていませんでしたが、要するにこういうことでしょう。
「なにのんびり菓子食いながらバリバリ伝説読んでるわけよ。世界はここまでいっているんだぜ!」
ロッキーのファンファーレが頭の中で鳴り響くのを聴きながら、私は手に持ったバリバリ伝説を捨てて、代わりに頭文字Dを読みはじめました・・・ではなくて、PixInsightを起動しました。
私が先日に処理したケンタウルスAはこちらです。
Rolf Olsenさんと私の画像の差はざっくり4つかと思います。
- 解像感の違い
- 濃厚な色合い
- ジェットを表現
- 銀河のハロの濃淡
解像感に関しては、露出時間こそRolfさんの130時間と私の100時間で変わりませんが、LRGBが25cm(10インチ)、Hαが30cm(12.5インチ)のニュートンで撮った画像と10cmの屈折での差を詰めるのは難しい(と言い訳)。撮り直すこともできない。
色合いは、頑張ればなんとかなりそうな気もしますが、今の私は彩度恐怖症なのです。彩度のやらかしについてはまた次回書こうと思いますが、いまの私の実力値では無理そう。ということでジェットを表現することと、銀河のハロをより表現豊かにすることにしました。
まずはジェットから。
ジェットをブレンド 〜 協力者の登場!
まずジェットを浮かび上がらせるために、HαからRを明るさをあわせて引き算しました。引き算の方法は先日の速報に記載しています。Hαの画像には、Hα輝線の他に、可視光の連続スペクトルがHα領域まで伸びている分も写っています。そのため一番近いRを引くことで純粋なHαだけを取り出そうという試みをしました。
次に背景のレベルを下げるため、この画像の中間の値を引きます。PixelMathでの式は、”Jet-Med(Jet)”です。
すると背景にムラが出てしまいました。
これをそのままRチャネルにブレンドすると赤がぶりが出てしまいます。空は十分暗いはずですが、大気光が入ったりしたのでしょうか。どうしたものか考えあぐねていると、FaceBookにメッセージが来ています。オランダ在住の雑賀さんからです。雑賀さんとは面識がなかったのですが、FaceBookに投稿した私の写真をみて嬉しいことにコンタクトくださったとのこと(雑賀さんのネオワイズ彗星を正面からみた螺旋構造の写真はすごいです。螺旋構造のことは初めて知りました。ぜひご覧ください!)。
雑賀さんによると、この背景ムラは外部の光によるものではなく、センサーごとに感度の差があることから生じるセンサー固有のパターンノイズなのだそうです。全ての写真にのってきますが、通常はSN比が高いので問題にならず、今回の淡く撮影された画像で顕在化します。フラットで補正するしかないのですが、いまの私のフラットの精度ではそこまで補正できていません。これは今後の課題です。雑賀さんもこの問題を研究されているとのことで、その成果も期待です!
日に何度かチャットでやりとりしながら、背景のノイズを減らす方法を議論しました。雑賀さんはPhotoshop使い。興味深いのは、PixInsightは演算で物事を考える一方、Photoshopはレイヤーで物事を考えます。たとえばノイズを減らす場合、私はどんな演算がよいか検討しますが、雑賀さんは「まずノイズだけのレイヤーを作ることを考え、その後で元画像から引き算する」というアプローチを取られます。それは私にはとても新鮮で、思考の幅が広がったのを感じました。
結局、ノイズをずばり消すことは難しく、議論の末、Hα-R画像と、背景レベルをさげた画像をパラメーターを色々変えて作成し、一番程度のよいものにマスクをかけてジェット部分だけストレッチすることにしました。マスクはジェットのL画像そのものを使った輝度マスクと、StarNetで作った銀河のマスクを組み合わせました。ノイズが消せない部分はCroneStampも使って塗り塗りしちゃいましたが、私の自主規制基準ではマスクは作為的に作っても良いことにしていますw。とはいえマスクで保護できない部分にもノイズが多かったので、ブレンドするL画像はHTのストレッチを軽くすることで、輝度が高い部分のみを採用しました。
雑賀さんという強い協力者を得てなんとかジェットはブレンドできました。次はハロです。
LHEでハロを強調
これはさほど難しくなく、LocalHistogramEqualization(LHE)を使用しました。LHEは劇薬なので使う時に気を使います。どんな画像でもLHEを強めにかけると、それっぽくうねうねした画像になりますが人工的な印象は拭えません。今回はKernel Radiusを大きめの128と、中間の64と2回実行しました。Amountは2回とも0.4で、その他は規定値のままです。でてきたうねうねはRolf Olsenさんのハロ部分と同じ形なので問題ないと思います。
結果は・・・?
ジェットのブレンドとハロの表現方法を見直しました。また背景を少し明るめにしてハロの広がりを失わないようにしました。結果がこちらです。
同じ画像を単独でも載せておきます。
どうでしょうか。ジェットも自然にブレンドできたこととハロの様子がより詳細になったことで、Rolfさんのレベルには近づけないまでも改善したように思います。
次は世界だ! (結局、バリバリ伝説「世界GP編」を読んじゃいました・・・)
<撮影データ>
NGC5128 ケンタウルスA – Photo by AstroCHL2JPN
2021年3月27日 〜 5月17日
Takahashi FSQ-106N (530mm, F5)
Takahashi EM-200
ASI1600MM Pro
Baader LRGB, Hα Filters
Autoguide – QHY5L-IIM / Baader Vario-Finder 60mm
露出(すべて-20°C冷却, Bin1x1)
L: 600秒x198枚
R: 600秒x68枚
G: 600秒x68枚
B: 600秒x69枚
LRGB総露出時間 67時間10分
Hα: 600秒x202枚 (33時間40分)
PixInsightにて画像処理