発見いっぱい。タカsiさんのオリオン座を画像処理しました!

Twitterで期間限定公開されたタカsiさんの生データ。私もお祭りに参加しました。いつもと違うデータを画像処理したところ、とても楽しい! 高品質なデータをあれこれ試してみました。発見もいっぱいでした。今回に先立つこと数週間、Masa’sAstroPhotography(ZWO沼再び)さんが北アメリカ星雲のデータを公開し、皆で画像処理するというイベントがありました。私はその時期、てんてこまいで参加できず、残念な思いをしていたので今回は乗り遅ずに良かったです〜。結果がこちら。

オリオン座中心部 (タカsiさんご提供の生データをNiwaがが画像処理)
オリオン座中心部 (タカsiさんご提供の生データをNiwaがが画像処理)

私はめっぽう気に入っています。普段は屈折を使っている私。アルニタクとアルニラムの光条が楽しい。この二つ星を綺麗に出すことを目標にしました。また上の方の分子雲は色が綺麗に出ているので、明るさを控えめにして色でモクモク感を表現しました。夜に見る雲をイメージしています。

しかしそんな思いとはうらはらに、最初は失敗して迷子になったんです。せっかくいただいた画像処理の機会なので、タカsiさんに了解を得て画像処理で工夫したところを残しておきます。

まずはRGBの処理

Star Alignmentで位置合わせを済ませた後、やっぱり色を見てみたいのでRGBから取り掛かりました。驚いたのは、データが素直というのかすんなりとカラーバランスを整えることができたこと。私は日本ではASI294MM Pro、チリではASI1600MM Proというモノクロカメラを使っています。そんなにRGBは苦労することはありませんが、今回はさらに容易にRGBデータを作ることができたように思います。

色合わせはPCCを、ストレッチはArchsinhStretchを最初にして、その後Histogram Transformationで仕上げています。LRGB処理をすると彩度が落ちやすいので、少しきつめに色を出しました。こんなときはArchsinhStretchは頼りになります。通常、ストレッチで明るくすると色が薄くなります。ArchsinhStretchは色に重きを置いたストレッチ処理で、色の濃度を保ったまま明るくしてくれます。

ストレッチしたRGBデータ (タカsiさんご提供の生データをNiwaが画像処理)
ストレッチしたRGBデータ (タカsiさんご提供の生データをNiwaが画像処理)

「もうこれでいいじゃん」と、このままフィニッシュまで持っていきたいのを、ぐっとこらえてL画像に取り掛かります。

高精細なL画像

L画像は最初から高精細な画像ですが、さらに欲張ってDeconvolutionをかけました。ストレッチはMasked Stretchと、Histogram Transformation(HT)での調整の二つをためしたところ、HTの方がコントラストが良くでて綺麗だったので、HTのみでストレッチしています。またL画像の明度を上げすぎるとLRGB合成の際に色が薄くなるため、ストレッチはほどほどににしています。

ストレッチしたLデータ (タカsiさんご提供の生データをNiwaが画像処理)
ストレッチしたLデータ (タカsiさんご提供の生データをNiwaが画像処理)

ここまでは順調です。あとはLRGB合成して、細かいところに手を入れて完成・・・と思った矢先、事件はおきます。

大物女優と男優の破局

LRGB合成はL画像とRGBのマリアージュ。今回は繊細なLと華やかなRGB。美男美女のだれもがうらやむ大物同士の結婚式となるはずでした。Linear Fitで二つの画像の明度を合わせ意気揚々とLRGB合成したところ・・・

LRGB前と後 (タカsiさんご提供の生データをNiwaが画像処理)
LRGB前と後 (タカsiさんご提供の生データをNiwaが画像処理)

眠くなっちゃました〜。全体のコントラストが下がっていますし、キラリと輝いていたオリオンの二つ星がぼんやりしている。さらには分子雲も薄くなっている。このあと、処理を頑張ってやりましたがリカバリーできませんでした。ノイズがほぼ無くなったのが唯一の救いです。

LRGB合成でこんなことは初体験です。失敗といえばLRGB合成したときに色が薄くなるくらい。理由を考えてみました。

日本でもチリでも私の光学系は一つの鏡筒、一つのカメラを使い、フィルターだけの違いでL画像とRGB画像を作っています。一方で今回のタカsiさんのデータは、L画像はε-160EDにASI6200MM Pro、RGB画像はε-130DにASI6200MC Pro。鏡筒もカメラもメーカーは同じですが、異なる製品を使っています。私のシステムのように一つの鏡筒、カメラであれば同じ光をフィルターの違いだけで撮ります。RGB個別のフィルターは重なりながらも可視領域の全体をカバーしますので、同じ鏡筒、カメラならRGBとLの写りは似ているはず。しかし異なる鏡筒、異なるカメラを使うタカsiさんのシステムは、光の入り方や感度などが異なり、場所ごとの写りが両者で異なることが考えられます。部分的にLにあるデータがRGBになかったり、RGBにあるデータがLになかったりしていることもありそうです。それをシンプルにLRGB合成すると問題を起こしたのかもしれません。

まずはお友達から

同じ鏡筒、カメラで撮影したLとRGBは、いわば長い交際期間を経て結婚したカップル。お互いの性格や好き嫌いもわかっていて、付き合い方がこなれています。しかし今回は、テレビドラマで共演した二人がいきなり結婚したようなものです(星野源とガッキーをディスっている訳ではありません)。さらに二人は高品質な大物。勢いでマリアージュしてもうまくはいかないのです。

そこで、まずはお友達からスタートすることにしました。

PixInsightのLRGBCombinationは、RGBデータのL*a*b*色空間のLをそっくりL画像に置き換えます。それがまずいと考えて、二つの画像を馴染ませるために、L画像と、RGBから取得したL画像を50%ずつブレンドして新しいL画像を作ることにしました。つまりRGB画像の特性をある程度、持ち合わせたL画像を作ったわけです。

L画像のブレンド (タカsiさんご提供の生データをNiwaが画像処理)
L画像のブレンド (タカsiさんご提供の生データをNiwaが画像処理)

ブレンドしたL画像を使ってLRGB合成したところうまくいき、全体の解像感があがり、コントラストも高くすることができました。

ブレンドしたL画像でLRGB合成した画像 (タカsiさんご提供の生データをNiwaが画像処理)

このあと処理を続けて、冒頭の画像になりました。TwitterでタカsiさんにLRGB合成方法についてお伺いしたところ、Photoshopで不透明度を変えながらLRGB合成しているのとことでした。

いまだにPhotoshopを使っていない私ですが、レイヤーで不透明度を変えているということは、おそらく私と同じようにL画像のブレンド比率を変えていると理解しました。今回、私は50%のブレンド比率にしましたが、もう少しL画像を増やしても良さそうで、経験をつめばもっとクオリティを高められそうです。今回のようなツインシステムの画像処理は私には初めてで、かなり時間がかかりました。今回は戸惑いましたが、慣れてくれば案外なんとかなる予感もしています。

LとRGBのツイン鏡筒による撮影は、二つの鏡筒の位置合わせやたわみ対策など撮影時の大変さは理解していたのですが、画像処理もなかなか工夫が必要でした。しかしハードルが高い分、マスターすれば、撮影効率も含めて画像のクオリティは段違いに上がる訳です。難易度の高いツインシステムで素晴らしい作品を次々と世にだしているタカsiさんは、あらためて「すげぇなぁ」って思いました。

それにしても、いつも自分が触っているデータと違うデータを画像処理するのは学ぶところ多しです。なにより楽しい。良い機会をあたえてくださったタカsiさん、ありがとうございます!!

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