チリのリモート観測所の利用者募集について

チリのリモート観測所

私は1年以上にわたりチリのアタカマ砂漠に設置した望遠鏡でリモート撮影を続けてきました。撮影した星雲や銀河の写真をご覧くださった方もいらっしゃると思います。素晴らしい夜空に加えて、日本と13時間の時差のあるチリの夜は日本の昼。リモート撮影は体の負担も少なく、とても楽しい活動です。この環境を独り占めしているのは、どうにも落ち着かない。もっと多くの人に経験して欲しい。そんな気持ちが募ってきました。

私は、幸運にも旅行で知り合った友人に現地でサポートしてもらい、運用を続けてきましたが、個人でチリのリモート設備を設立するには莫大な費用がかかります。また現地のノウハウも少ないので困難が伴います。手に届くコストで、自分の望遠鏡をチリのアンデス山中に設置し、日本から遠隔操作で操作することができたら。そんな天文ファンの夢を叶えることができないか、考え続けてきました。

今回、1年以上の議論と準備を経て、チリでリモート設備を運営しているObstech社との話がまとまりました。日本市場向けのリモートホスト設備が間も無く完成します。従来のリモート設備は、50cm以上の大型の反射望遠鏡を設置できるようにするため十分な広さがある反面でコストは高いものでした。今回の設備は日本市場向けに設計された中規模の望遠鏡を設置できるピラーを22台用意しました。中規模といっても、直径2mの場所を確保していますので、十分な大きさの望遠鏡を設置できます。

利用者の方はご自身の望遠鏡と赤道儀を設置し、日本からリモートコントロール可能です。今回は利用者を2022年12月末まで募集します。初めての取り組みでもあるので、Obstech社とも協議し、いったん2022年の募集メンバーで開始することにしました。2023年以降の新規の募集は、運営状況を確認したうえで別途ご案内いたします。

世界でもトップクラスの夜空

設備のあるチリ・ウルタド渓谷はアタカマ砂漠の中にあり標高は1600mです。現地から40キロ程度離れたところには、有名なセロ・トロロ汎米天文台やジェミニ南天文台も設置されており、その空のクオリティは想像できると思います。

月がない夜の平均的なSQMは21.97です(天頂付近で測定)。下記のグラフをみてわかるように7月〜8月の天頂付近のSQMは深夜2時頃に21.2程度に下がります。これは天の川の影響によります。SQMの値を大きく下げるほどの天の川が、夜空に広がっています。

年間を通して安定した天候

観測所が設置されている場所はアタカマ砂漠の中の乾燥地帯にあります。過去5年の実績では、天体観測可能な時間は85%前後でした。また月別の観測可能な時間数も隔たりなく一定しています。この地域は6月〜7月は比較的天気の悪い日が続きますが、一方で冬にあたり夜の時間が長いのでその分補完され、時間数では年間で一定しています。過去1年以上にわたってチリのリモート観測を続けてきた感覚では、6月-7月の時期に、一度曇りだすと1週間以上も曇りが続くこともありますが、それ以外はずっと晴れたままの印象です。

アンデス山中のアタカマ砂漠に設置

運営は実績のあるObstech社

運営するObstech社はチリにおいて、8つの建物で50台以上の望遠鏡をリモートで運営しています。現地には常駐スタッフが在籍しており、コードの抜き差しなど、現地にいかなければ対処できないトラブルの対応も可能です。また光軸調整、クリーニング、機器の変更なども、現地のエンジニアが対応できます。

一方でリモート撮影はいろいろなトラブルが毎日のように発生することも事実です。そのすべてに厚いサポートができるわけではありません。トラブル対応も含めて楽しめる方、他のユーザと情報交換しながら助け合える方に検討いただきたく思います。一緒に育てていける方を募集しています。

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初期費用ゼロ円。費用は月あたりに換算すると6万円程度

費用は年間5,000,000チリペソです(2022年7月時点の為替レートで72万円程度)。この中に、機材の設置費用、赤道儀を設置するピラー、ネットワーク利用料、電気代、基本サポートが含まれます。ユーザは望遠鏡、赤道儀などの機材、PC、バックアップ用のストレージを準備します。また初期費用はゼロです。費用は年払いで、60日前の通知でサービスを終了することもできます。機材の返送処理は必要であるものの、設備を自分で持たないことで、ライフスタイルにあわなかったときに止めることのできる自由があります。

同様なリモートホスティングサービスは一般に月額10万程度が相場です。Obstech社の同様のサービスでも年額で110万円程度(月あたり9万円)です。今回、月あたり6万円程度を実現できたのは中規模の望遠鏡に対象を絞ったためです。リモート設備では「50cm以上の鏡筒をおきたい」というニーズにも応えるため一機あたりのスペースは広くとられています。しかし日本のユーザのニーズを考慮し、今回は中規模のスペースの設備としました。中規模といっても、一台あたり直径2mのスペースが確保されていますので、全長1m以上の鏡筒を設置可能です。

円安が進んでいますが、チリペソもドルに対して安くなっています。この10年でみると、チリペソと円の為替は安定しています。

観測地は年間300日以上晴れています。月のある日が半分としても150日。5人のグループで利用すれば月に1万円強で、一人当たり60日、月のない時間に限っても30日分の撮影が可能です。グループでの利用もご検討ください。

提供するサービス

年間5,000,000チリペソの料金には下記の設備の利用および基本サービスが含まれます。

<設備利用>

  • 機材の初期設置 (機材の更新作業は別途有料です)
  • 直径2m範囲内の機材設置スペースおよびピラーの提供
  • 1日あたり10GBのデータアップロードができるネットワーク
  • 1日あたり8400ワット時の電力使用(ピーク利用は500ワットまで)
  • 毎日のスライディングルーフの開閉(昼間や天体観測できない夜は閉めています)

<基本サービス>

  • コンピュータのリセット
  • ケーブルの抜き差し
  • 機材のクリーニング(2ヶ月に1度、CO2スプレーで主鏡、レンズのゴミを飛ばします)
  • Dark撮影のサポート(月に1回、Dark撮影のためのレンズキャップを閉めます)

<ユーザが準備する機材>

  • 鏡筒
  • 赤道儀
  • ケーブル類
  • ソフトウェアがインストールされたPCおよびストレージ
  • その他、アクセサリ

スペアパーツの交換や光軸調整などその他のサービスは別途、実費で対応します。費用は都度見積もりしますが、時間あたり3000円程度です。

よくある質問

Q: 丹羽さんはどういう立場ですか?
A: 今回の企画をAstroCHL2JPNチームとともにObstech社と立案しました。丹羽およびAstroCHL2JPNチームは本サービスを日本に紹介する役割を担っており、またチリのリモート観測所が継続的に運営できるように活動します。ユーザ利用の契約はユーザとObstech社とで直接結びます。日々の利用にともなう現地とのコミュニケーションは、Obstech社とユーザの方が英語で直接の会話していただきます。Obstech社によると、これまでの海外ユーザの実績ではWhatsAppなどのチャットツールと翻訳ツールを使用することで、コミュニケーションができているとのことです。個人では解決が困難な問題は、丹羽およびAstroCHL2JPNチームもサポートいたします。

Q: AstroCHL2JPNチームとは何ですか?
A: チリの首都サンティアゴ在住のCarlos Campos氏と、観測所近くに住んでいるEduardo Latorre氏、日本に在住の丹羽雅彦の3名からなるチームです。今回のプログラムをObstech社とともに推進しています。

Q: リモート活用のノウハウなどは共有されますか?
A: リモートを始めてみると、さまざまなことが起き、都度対応することでノウハウも蓄積されると思います。運用が始まったら、ユーザ会を結成し、リモートのメンバー同士でノウハウ共有をしたいと考えています。丹羽自身もリモートユーザとして1年経っており一定のノウハウがありますので、ユーザ会のメンバーとして情報提供をいたします。

Q: サービスは充実しているのですか?
A: リモートホスティングのサービスとしては、常駐スタッフも配置した充実したサービスです。しかし、リモート運用は毎日がトラブルの連続でもあります。手元にある機器であればすぐに解決することも、リモートでは解決までに時間と労力がかかります。それらはObstech社のエンジニアと協議しながら、ユーザの方が自ら解決する必要があることをご理解ください。初めての試みでもあり、日本のユーザ同士が情報提供しあいながら、助け合って運用できる形を作りたいと思っています。一緒に育てていける方を募集しております。

Q: 望遠鏡はどのように用意するのですか?
A: 赤道儀を設置するピラーはObstech社が用意します。鏡筒、赤道儀、オートガイダー、フォーカサー、ローテーター、PCなど機器はユーザが準備し、日本から送付します。日本で十分にテストしてから送ることで、初期のトラブルを避けることができます。また現地のサポートを考慮してWindowsは英語版を推奨します。

Q: 機材の現地調達は可能ですか?
A: 現地の業者を紹介することが可能です。機材の輸入からセットアップのサポートが業者により可能です。

Q: DarkやBiasはどう撮影しますか?
A: Dark、Bias撮影のためのレンズのキャップをかぶせる作業は、月に1回分が基本サービスに含まれます。また現在のObstechのユーザは、自動でキャップをかぶせる機構を用意し、黒い光を通さないフィルターを併用してルーフが閉まっているタイミングで撮影している方も多くいらっしゃいます。

Q: Flatはどう同撮影しますか?
A: 私はスカイフラットを撮影しています。明け方の数分間の時間を狙って、太陽と反対側の空を撮影してフラットとしています。またフラット用の光源が装着されたキャップを自動で開け閉めする機構を利用しているユーザもいます。その際のフラット撮影は他のユーザへの影響を考慮して天体撮影時間にはできず、悪天候などでルールが閉まっている夜に撮影します。

Q: ケーブル類やスペアパーツの準備はありますか?
A: 各種ケーブルやいくつかのスペアパーツはObstech社に常備してあります。実費にて提供可能です。

ご興味のある方は、下記の問い合わせフォームから情報を送信ください。のちほど私からご連絡をさしあげます(下記のGoogleへのログインは不要です。最初に記載されているログインを促すコメントは無視してください)。

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