終わりゆく夏に想いをよせて、さそり座の中心部です。左下のオレンジ色の星が、さそりの心臓アンタレス。さそり座ってこんなにカラフルなんですよ。さすがオリオンを一発で倒したやつ。たくさんある天体の中でも、最も色彩豊かな領域の一つです。
冬のオリオン座に対して、夏のさそり座。さそり座は夏を代表する星座なのですが、都会でも空高く見ることにできるオリオン座に比べてさそり座は夏の南の空に低く見えるため、まだその姿を見たことがない方が結構いらっしゃいます。それはもったいない。実にもったいない。星座というものは、たいがい「これはカラス座だよ」とか言われても、想像力をフルに発揮してようやく「そう見えなくもないかな」という感じなのですが、さそり座は誰が見てもさそりに見えます。尻尾のくるっと回ったあたりの美しさはため息がでます。先日も鎌倉でみんなで食事をしていたとき、いつものごとく食事後に無理やり海に連れていって天体観測を敢行しました。普段は星に興味がない方も、さそり座をみたときは「おお〜」と感嘆の声をあげていました。いまならまだギリギリ間に合います!晴れた夜は、南の低い空にさそり座を探してみてください。9月ですと21時には沈んでしまいます。見逃した方は、また来年!
このさそり座の写真は、チリに設置した望遠鏡でリモート撮影しています。日本では南の空低いさそり座ですが、南半球のチリでは東の空からぐんぐんと真上に登っていき、一番高い天頂付近まで到達します。そのあとは西の空に帰っていきます。これは地球から見て、さそり座が南半球川の真上にいるからです。
面白い話があります。私が初めて南半球に行ったのは30年前のオーストラリアでした。その時、オリオン座がひっくり返っているのを見て感銘を受けたのを覚えています。ベテルギウスが下にあるのです。地球の反対側から見ているので、ひっくり返って見えるのですね。しかし、2019年にチリに旅行した時に見たさそり座は、面白いことにひっくり返っている印象が全くありませんでした。これは、オリオン座とさそり座の位置に理由があります。昨年、天リフのイベントで解説しましたので、興味がある方はご覧になってください。
撮影したさそり座の写真は、8枚の写真をつなぎあわせています。チリに設置した望遠鏡とカメラでは収まりきらなかったためです。この処理をモザイクといいます。
この処理をやるためにはたくさんの写真が必要で、3月中旬から7月までずっと撮っていました。モザイクは星沼会のそーなのかーさんと一緒に処理しました。そーなのかーさんは、機材のセッティングや画像処理の前処理など基盤部分の技術に長けていて、星沼会のインフラを支えているとっても頼りになる方です(みんな頼りすぎ問題あり)。
<撮影データ>
めっちゃカラフル。さそり座の心臓部
2022年3月28日〜7月7日
Takahashi FSQ-106N (530mm, F5)
Paramount ME
ASI1600MM Pro
Baader LRGB, Hα Filters
Autoguide – QHY5L-IIM / Baader Vario-Finder 60mm
露出(すべて-20°C冷却, Bin1x1, Gain 0, Offset 10)
総露光時間 131時間55分
パネル1
L: 300秒x124枚
R: 300秒x44枚
G: 300秒x43枚
B: 300秒x41枚
パネル2
L: 300秒x107枚
R: 300秒x35枚
G: 300秒x33枚
B: 300秒x38枚
パネル3
L: 300秒x112枚
R: 300秒x30枚
G: 300秒x30枚
B: 300秒x25枚
パネル4
L: 300秒x98枚
R: 300秒x28枚
G: 300秒x33枚
B: 300秒x36枚
パネル5
L: 300秒x110枚
R: 300秒x29枚
G: 300秒x28枚
B: 300秒x30枚
パネル6
L: 300秒x87枚
R: 300秒x50枚
G: 300秒x29枚
B: 300秒x44枚
パネル7
L: 300秒x71枚
R: 300秒x16枚
G: 300秒x25枚
B: 300秒x26枚
パネル8
L: 300秒x74枚
R: 300秒x35枚
G: 300秒x34枚
B: 300秒x38枚
PixInsight、Astro Pixel Processorにて画像処理(共同画像処理 そーなのかーさん)
撮影地: チリ ウルタド渓谷(Obstech – El Sauce Observatory)