2時間あったら何を撮る? LRGBのバランス検証

モノクロカメラを使っていてとっても楽しいところであり、かつ頭を悩ませるのはLRBGの撮影時間の比率です。先日もそーなのかーさんがこんなツイートされました。

私は4時間つまり240分あったら、半分の120分をLにあて、残り120分で40分ずつRGBを撮影すると思います。とはいっても曇ったりミスしたりで4時間まるまる撮影できない可能性もあるので、

  1. まず最初の60分に20分ずつRGBを撮り
  2. うまくいったら次の120分でLを撮り
  3. 最後の60分をBGRの順に撮る

というプランで行くと思います。Rで終えるのは対象天体の高度が下がってきた時の光の耐性を考慮しました。基本的に高い高度のときにLやBを撮りたい。

これでめでたしめでたし・・・と思っていたら、タカsiさんのこんなコメント。

おお、そんな考えが!確かに私のASI294MM ProもRGBはめっちゃ写ります。RGBが輝度が高いのならそんな考えが成り立つのですね。・・・というわけで実験してみました。

  「2時間あったら何を撮る?」

4時間で検証できるデータがなかったので2時間です。

馬頭星雲を使いました

ちょうど昨年撮影した馬頭星雲ならメジャー級。輝度の高い部分も低い部分もあります。使った画像はこれです。

検証に使った馬頭星雲
検証に使った馬頭星雲

<撮影データ>
2020年11月21日21時40分18秒〜
BORG 72FL + 7872レデューサー (288mm, F4)
ASI294MM Pro 
Astrodon LRGB Gen2 E-Series Tru-Balance Filters
露出(すべて-10°C冷却, Bin2x2, gain 120)
 L: 60秒x97枚
 R: 60秒x57枚
 G: 60秒x53枚
 B:60秒x60枚
 総露出時間 4時間27分

1枚あたり1分露出でわかりやすいところもメリット。このデータを使って、LRGBの総露出時間を2時間にした場合の組み合わせを作って実験してみました。

検証したLRGBの組み合わせ

作ったのは4つの組み合わせです。

  • ケース1・・・L重視型 
     L: 90分
     RGB: 各10分
  • ケース2・・・バランス型
     L: 60分
     RGB: 各20分
  • ケース3・・・均等型
     L: 30分
     RGB: 各30分
  • ケース4・・・RGB重視型
     L: 15分
     RGB: 各35分

ケース2が私が通常目指している撮影時間の比率です。120分の半分をLに使うパターンです。しかし現実はいつもRGB撮影で手間取り、ケース2とケース3の間くらいになっちゃいます。ちょうどこの馬頭星雲がそうですね。

それでは実行!

画像処理はPixInsightで実施しました。4つのケース分をPixInsightのWBPPに放り込みます。できあがったLRGBの各マスターは、Lの場合はDBE→HT、RGBの場合はDBE→PCC→HTを実行し、LRGBCombinationプロセスで合成しています。比較を容易にするため各種強調処理やノイズリダクションはかけず、シンプルにHistogramTransformation(HT)のみのストレッチとしました。

結果は・・じゃ〜ん

馬頭星雲近くの比較
馬頭星雲近くの比較

RGBの彩度はケース4がもっとも高くなりました。しかしケース4は画像が粗いようです。ここでケース4が脱落。ケース3と2では馬頭星雲周りの様子がケース3よりケース2の方が繊細に捉えられている気がします。最終決戦のケース1と2は・・・うーん。判定が難しい。わかりやすいようにケース1と2の彩度を調整してみます。

ケース1と2を彩度調整して比較
ケース1と2を彩度調整して比較

ケース1の方が若干、細かい構造を表現できているようですが、色のノイズが多くなっています。左上部分を拡大してみます。

拡大してみると
拡大してみると

やはり色のノイズがケース1の方が多いですね。RGBも一定の露出量は必要のようです。馬頭星雲の比較ではケース2の「LRGBバランス型」が良い気がします。他の箇所もみてみましょう。

燃える木のあたりの比較
燃える木のあたりの比較

今回もケース1と2が良いように思います。気持ちケース1の方が詳細な感じでしょうか。バックグラウンドも確認してみます。

バックグラウンドの比較
バックグラウンドの比較

Lが非常に少ないケース4はノイズが多いですが、ケース1、2、3はほぼ互角といったころでしょうか。

今回の私のケースでは、Lが多めのケース1と2の品質が良く、色ノイズを比較してケース2に軍配があがるように思いました。つまり240分のうち120分をL、残り120分をRGBに40分ずつです。しかし一つの画像でも箇所によって異なるため、光学系や撮影場所の空の暗さ、撮影対象で大きく変わりそうです。

RGBだけで撮影する

ここでもう一つやってみたのが、2時間をまるまるRGBだけに使ったらどうなるか。Lなしです。

RGBだけの場合
RGBだけの場合

LなしのRGBのみが意外な健闘を見せます。ノイズが無い分だけケース4よりも品質は高く感じます。馬頭星雲の部分を拡大してケース4とRGBのみを比較してみます。

ケース4はRGBのみよりノイズが多い
ケース4はRGBのみよりノイズが多い

ケース4のRGBは35分、右のRGBのみは40分。RGBの露出時間はさほど変わりません。しかし左側のケース4の方がノイズが多くなっています。これは15分という短時間のLを入れた結果でしょう。中途半端なL画像を合成することで全体の品質を落としてしまいました。さらにはL画像がピンボケ疑惑があることを見つけてしまいました・・・。RGBに対して星像が膨らんでいます。このころはまだバーティノフマスクを導入する前で、目でみてピント合わせしていたのでピントが正確ではなかったのでしょう。とするとL画像のフォーカスをもっと良くすれば、全体の画像も良くなったはずです。

気持ちを切り替えて、燃える木のあたりをみてみると・・・

燃える木のRGBは他と遜色ない
燃える木のRGBは他と遜色ない

なんということでしょう。RGBだけの画像は、ケース2に匹敵するもしくは凌駕しているようにも見えます。タカsiさんが述べられていた「明るい星雲ではRGB強度を強くした方が良い。RGBだけでも十分に感じることが多い」とはこのことでしょうか。

ということで、私の光学系、撮影環境においては「全体の露光時間の半分をLにあてて、残りをRGBにあてる」という戦略で当分続けようと思います。またL画像が十分露光できたならば、残り時間は明るい星雲ではRGBに時間をかけるのも検討の余地がありそうです。

(参考) L画像とRGB画像

最後に参考までに検証に使ったLとRGB画像を掲載します。馬頭星雲と燃える木は同じ画像の拡大ポイントを変えたものです。

L画像(馬頭星雲近辺)
L画像(馬頭星雲近辺)
RGB画像(馬頭星雲近辺)
RGB画像(馬頭星雲近辺)
L画像(燃える木付近)
L画像(燃える木付近)
RGB画像(燃える木付近)
RGB画像(燃える木付近)

以上、2時間あったら何を撮るでした〜。

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