天体写真で遠近感を感じる方法がないか、とつねづね思っていました。こう思ったのは、先日、太陽の黒点の写真をみたとき。太陽周辺の黒点が少し歪んで、太陽が円ではなくて球であることを感じさせるものでした。
「そうか、天体って3次元だよね」
こんな当たり前なことを忘れるほど、星空は空に張り付いて2次元です。たとえば銀河の写真。「銀河の後ろの星が」とかつい言ってしまいますが、本当は星がすごく近くにあって銀河ははるか彼方です。でもやっぱり星は銀河の後ろに見えてしまう。なんとかならないものか、と思っていた私にチャンスが巡ってきました。こちらです。
左下のM4が直径75光年。右上のNGC6144が直径62.5光年。ほぼ同じ大きさです。しかし地球からの距離が異なり、M4は7200光年、NGC6144は2万9000光年と4倍強違います。これが大きさの違いとなって現れているのです。さらにうまいことには星雲のガスが手前にあって、雲の向こう側にNGC6144がいるようにできました。
もともと球状星団を撮りたいなとM4を対象にしたところ、近くにNGC6144がいることに気がついて、この構図になりました。東南が上になっています。
この構図は上手く行ったんじゃないかと悦にいっている私。「遠近感」はこれからもちょっとだけ意識して、またチャンスを伺おうと思っています。
<撮影データ>
M4とNGC6144 – Photo by AstroCHL2JPN
2021年4月15日 〜 6月14日
Takahashi FSQ-106N (530mm, F5)
Takahashi EM-200
ASI1600MM Pro
Baader LRGB, Hα Filters
Autoguide – QHY5L-IIM / Baader Vario-Finder 60mm
露出(すべて-20°C冷却, Bin1x1)
L: 600秒x167枚
L: 40秒x95枚
R: 600秒x63枚
G: 600秒x59枚
B: 600秒x67枚
LRGB総露出時間 60時間23分