まるやち湖で星の光を浴びる 〜 湖に浮かぶオリオン座

Twitterの星仲間が長野県のまるやち湖に集まりました。

Aramisさん、M&Mさん、ぐらすのすちさん、だぼさん、星屋さん、私です(あいうえお順)。AramisさんとM&Mさんは早めに現地入りされており、明るいうちに初めてお会いすることができました。予想したとおり、全く初対面感はなく、たいした挨拶なくいきなり会話ができます。生活環境や所属、立場とかに関係なく「星が好き」という一点で繋がる関係がとても心地よく感じます。そういえば知人の紹介で星屋さんと2年前にお会いしたときは、お互いTwitterもやっておらずオンラインでもオフラインでも初対面だったものの、いきなり居酒屋で3時間くらい話し込みました。オンラインで話していたから話しやすのではなくて、共通の趣味である星・宇宙で繋がっているのがポイントですね。

この夜、私を除く皆さんは、図ったかのようにアンドロメダ銀河にご執心。FSQ106EDとFRA600と口径10cmを超える鏡筒が4台横一列に並ぶ姿は壮観でした。

屈折望遠鏡ばかりが横一線。手前はぐらすのすちさんのFC-76、その奥に私のBORG。10cm強軍団はその奥です(肝心なのが見えない)

私は、といえば、アンドロメダは眼視にまかせ、8月に撮影したアイリス星雲の追加撮影です。みんなで混ぜたアイリス星雲が素晴らしかったので、自分のももう少しクオリティを上げたかったのです。月が1:30くらいに昇るので今日は前半の時間勝負です。そして時間と勝負して勝ったことのない私でありました。

いきなり反転の巻

撮影対象の天体を望遠鏡の視野にいれることを導入と呼びます。望遠鏡は拡大率が高いのでなかなか大変な作業で、いまは自動導入が全盛です。そんななか私の赤道儀は手動導入。しかしアイリス星雲は8月も一発で入ったので問題ないはずです。集まってきた皆さんから「アイリス星雲を手動で入れるなんてすごいです」と言われ、鼻高々な私。手動導入には目立つ星をいったん視野にいれて、そこから目盛を使って目標の天体に移動します。すぐ近くのケフェウス座から入れるつもりでしたが、暗くて星が多すぎ問題により見誤りそうだったので、少し離れていますがはくちょう座のデネブから導入しました。

手動導入職人を自認する私。果たしてアイリス星雲は一発で入りました。

 「どうですか、一発ですよ」

自慢げに振り向くと誰もいません。仕方がないので、遠くで動画撮影の準備をしているぐらすのすちさんを「ちょっといいかな?」と呼びつけて自慢をしました。

次は構図です。ちゃんと前回の構図と同じになるよう、なんども微調整を繰り返し決定です。前回のアイリス星雲も東西を間違えて大パノラマになった事実がありますので、かなり気を使って構図を調整しました。

これでいよいよ撮影、と思った瞬間に事件が・・・。

天体撮影には反転という恐怖の儀式があります。南北を貫く子午線を越えたとき、望遠鏡をひっくり返さないといけないのです。自動式はボタン一発ですが、手動の私はせっかく導入した天体を入れ直し。構図も作り直し。さらには反転中に赤道儀をさわって極軸がずれることも・・・。かくも辛く切ない反転ですが、今回のアイリス星雲は幸いなことに子午線近く。今回は反転なしで撮影できました・・・と思ったら・・

  (ん・・望遠鏡が逆を向いている・・・。)

反対向きに望遠鏡を設置してしまったのです。なんと撮影開始1分で反転の憂き目に遭ってしまいました。

  「初手、反転!」

いつの間に集まったのか、先ほどまでに私を褒め称えていた御仁らがケラケラ笑っています。私は苦し紛れに、

  「いやあ、チリの空と間違えました!」

チリの空は日本と違い星は時計回りです。その場の思いつきにしてはそれらしい言い訳。しかし本当はそんなことはありません。何度も星雲の通り道を確認していましたので、普通にポカミスです。切なく反転をすることにしました。

私の反転の方法はこうです。

反転の方法

まず東西方向(赤経)に180回転させ望遠鏡を反対に向けます。変な方にむいた望遠鏡がもとの対象天体に戻るために今度は北極星を中心に南北(赤緯)をひっくり返します。なんとか儀式を終えました。ふ〜。

目で見てたのしむ

まるやち湖はAramisさんとM&Mさんのメインの活動の場の一つ。とても暗くて綺麗な空でした。その日は夕方まで雲があったものの、日没後は雲ひとつないクリアな空。寝っ転がって思う存分、星を堪能しました。

素晴らしかったのは、だぼさんからお借りした倍率2倍のワイドピノ。だぼさん曰く「目が良くなった気がします。星座もよくみえます」とのこと。どれどれ・・・と、おぉ。確かに倍率が低いから肉眼に近くてとっても目が良くなった気がする。これはすごいたのしい。アンドロメダ銀河も位置関係がよくわかります。ぐらすのすちさんにも10倍の双眼鏡をお借りしました。こちらはアンドロメダ銀河はコアだけでなくハロー部分までよく見えます。

寝っ転がって宇宙を感じていると、オリオン座が昇って来ました。そこで一眼カメラを取り出して撮影しました。今日は風もなかったので、湖面に綺麗に星が映っています。湖面のオリオン座のベテルギウスも赤いのが今回の萌ポイントです!

湖に浮かぶオリオン座 (構図原案:ぐらすのすち 撮影:Niwa)

アイリス星雲の方はのんびり画像処理をしようと思います。完成したらお披露目しますね。それから、また専属動画カメラマンのぐらすのすちくんが、たのしい動画を作ってくれることでしょう!それも楽しみにしています。

<撮影データ>
湖に浮かぶオリオン座
2021年10月3日0時24分35秒
Fujinon XF8-16mmF2.8 R LM WR (f16mm F2.8)
Fujifilm X-T30 (ISO 3200)
露出25秒
Adobe Lightroomにて画像処理
撮影地: 長野県諏訪郡原村

速報! 実は反転いらない!

本記事を公開したところ、ユニテックの加曽利さんからご連絡をいただきました。加曽利さんと言えばSWATの産みの親であり、育ての親。私は天体撮影を始めてから、いろんなことをめっちゃ教えてもらっています。その加曽利さん曰く・・・

  「反転、いらないですよ!」

な・・なんですと!!

反転をする理由はおもに二つ理由があります。

  1. 機材が赤道儀にぶつかるのを防ぐ
  2. 荷重が東から西に移行するとき、ふらつくのを防ぐ(東西で完全バランスになり、歯車のマージンであるバックラッシュの中でふらつきます)

SWATの場合、1は問題ありません。機材のレイアウトを自由にとれるので、ぶつからないようにすることができます。私が気にしていたのは2のふらつきです。これまで、子午線を通過するとき突如として追尾精度が悪くなった経験があります。スタート時はウェイトは東側荷重にしています。しかし途中でバランスが東西でつりあってしまい、ゆらゆらするようなのです。

加曽利さんの話では、機材の設置時に子午線を超えても東側荷重を保持できるようにバランスをとっておけば大丈夫とのこと。子午線を超えるとウェイトが上向きになって珍妙な形になりますが、問題なく追尾できるそうです。

そ・・そうだったのか・・・。さらば反転!

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