ポータブル赤道儀で宇宙を感じる 〜 SWAT-350の楽しみ方

私が使っている赤道儀は一軸で手動導入のSWAT-350。いわゆるポータブル赤道儀です。一方、チリでは二軸の自動導入EM-200。マニュアル操作とフルオート、対照的な二つの機器を使うことで、双方の良さがわかってきました。今回は、ポータブル赤道儀の楽しみについて触れてみます。SWAT-350を題材にしていますが、他のポータブル赤道儀でも事情は似ていると思います(ただし私のSWATはモーター駆動は一軸ですが、赤緯方向にも回転ユニットはつけており動作は二軸です)。

では私のポータブル赤道儀の楽しみ方を紹介します!

いっぱいついてる私のSWATの勇姿
いっぱいいろんな物がくっついてる私のSWATの勇姿

楽しみ1: 地球の動きを直接感じることができる

星空は静止していて、地球は動いています。天体写真を撮るには、動く地球に乗ったまま動かない星空を撮影するという離れ業が必要です。そこでの赤道儀の役割は、静と動の間を取り持つこと。私のイメージはこうです。

静と動の間を取り持つ赤道儀
静と動の間を取り持つ赤道儀

星を追尾するのではなく、勝手に動いてしまう大地に対して星にしがみつく感じ。フルオートの場合、赤道儀にかなりを任せることとなります。しかし天体の導入など自分で操作することが多いポータブル赤道儀の場合、人間がシステムに組み込まれます。つまり「動く地球と動かない星空の間の調整作業」を、赤道儀と人間がタッグを組んで実行するわけです。そのせいか一晩撮影していると、地球の動きを肌で感じることができます。普段あまり意識しない「動く地球」の感覚。これを味わうことができるのは新鮮です。

楽しみ2: 斜めに立っている感覚を楽しめる

日本は北緯30数度。日本での我々は地軸に対して斜めに立っています。太陽や星が昇って沈むのは毎日見ていましたが、天体撮影を始めるまで自分が地軸に斜めに立っている感覚は持ち得ていませんでした。

ポータブル赤道儀は自動導入がないので、目的の天体まで自分で鏡筒を向ける必要があります。経緯台が東西南北と高度で位置合わせするのに対し、座標軸が斜めの赤道儀で目標天体に鏡筒を向けるのは、意外と大変。空を見上げて、赤経と赤緯の線を大まかに空に描き、それに沿って鏡筒を向けていきます。

こんな一連の操作をしていると、自分が地球上に斜めに立っている、なんだかおぼつかない感じがしてきます。こんな感覚を味わえるのも、手動式の醍醐味です。

地軸に斜めにたつ
地軸に斜めに立つ

楽しみ3: 導入の感激を経験できる

ポータブル赤道儀は良くも悪くも自分で目標天体を入れなければなりません。慣れないうちはこれが大変。導入作業を始めてから2時間かかっても導入できないことがありました。一人で真っ暗なところでやっているとさらに大変。どんどん星はかたむき、空虚な時間が過ぎていき、泣きたくなってきます。

でも、ついに導入できて、モニターの片隅に目標とする天体が写っていた時と感度といったら!初めて天体撮影したときに、子持ち銀河が映っていたときは猛烈に感動しました。今はそこまでの感動はないものの、それでも導入できて写っていた時の嬉しさはたまらないものがあります。チリのリモート撮影はプレートソルビングを使った導入で楽ちんですが、楽しみが減って損している気もしています。

ちなみに私のSWATは目盛環がついているので、実は導入はそんなに大変ではありません。基準星を決めて望遠鏡向けたら赤経、赤緯を目盛環に設定します。次に撮影対象の天体の赤経、赤緯になるまで回転させれてば比較的簡単に導入できます。

基準星から目標天体へ目盛環で導入
基準星から目標天体へ目盛環で導入

ポイントは基準星の選び方で、撮影対象天体の近くの基準星を選ぶと導入がしやすくなります。赤経、赤緯のどちらかが一致している星があれば完璧です。その時は一軸だけの移動で目標天体に到達できます。

目盛環を使う場合でも、対象の天体の位置を実際の空で確認をしっかりすると成功率が上がる気がします。実際の位置を確認する癖をつけると、双眼鏡で空を楽しむときも天体を発見しやすいメリットもあります。

こんなに楽しみがあるんですよ!最後にポータブル赤道儀のメリットもあげたいと思います。

メリット1: やっぱりポータブル。飛行機に持ち込めます

私のSWATは、オートガイダーをつけ、Pole Masterに、冷却モノクロCMOSカメラ、フィルターホイール、PCとフル装備。「全然ポータブルじゃないじゃん」と揶揄されています。しかしやっぱりポータブル。飛行機の手荷物として持ち込むことができます。ちなみに鏡筒のBORGもバラせるのでレンズだけ機内に持ち込んでいます。昨年の夏に飛行機で四国遠征に行ったときも壊れる心配のある赤道儀とレンズは機内に持ち込みました。時期がきたら海外にも行きたいと思います。とはいえ最近はハーモニックドライブの赤道儀も軽量小型なので、これはポータブル赤道儀だけのメリットではないかもしれないですね。

メリット2: 機械的トラブルが少ない

自動導入の赤道儀は自動とはいってもボタン一発でその日が終わるわけでなく、いろんなトラブルが待ち受けています。実際、チリのEM-200では、やれプレートソルビングがうまくいかない、撮影中に変な動きをする、など毎日が機械的トラブルとの戦いです。しかしSWATでそんな経験したことはありません。SWATをはじめとする一軸のポータブル赤道儀は、余計な機能を全部省いて地球の日周運動に追尾する機能だけがついています。そのためトラブル知らずなのでしょう。これは大きなメリットです。

とはいえ機械的トラブルがないことと撮影トラブルがないことは無関係。私はその分、クリエイティブと言えるほどの人的トラブルを繰り返しています・・・。

3つの楽しみと2つのメリットを挙げてみました。楽しいことは、手間のかかることの裏返しでもあります。素晴らしい天体撮影をしたいという目的に最短距離ではないかもしれません。しかし、そこは趣味。いつも最短距離をとるのではなくて、楽しいことに寄り道したいんです!

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