その日、深城ダム(通称:フカシロ、俗称: ウラシロ)には、誰すのすちさんを筆頭に、星屋さん、N_Toshさん、Niwaが集まりました。Twitter仲間のM&Mさんとだぼさんが朝霧に向かっているとの情報も入っており、下手を打ってチームフカシロの名を汚すわけにはいかない、と軽い緊張感がその場を支配しています。その数時間後に凹んだ自分がいるとは、この時点ではまったく予想していません。
ぐだぐだでした。
当日の私は失敗のファンタジスタ。やらかしの貴公子。暴風に加えて、ありとあらゆるミスを重ねた結果、総露出時間をまったく確保できず、撮れた画像もぶれぶれでした。
ちなみに盟友、星屋さんはカメラを自宅に忘れました。星を眺めながら優雅にコーヒーを飲んでいます。
一人気を吐いたのはN_Toshさん。強風で撮れ高が低くなる中、ラッキーイメージングに切り替えて対応しています。
皆がそんなぼろぼろの戦いを続ける中、「うぇーい、点像だ」との声がこだまします。みれば今回から新しくiOptronの赤道儀を導入した誰すのすち氏。こざかし・・失礼、聡明なことに風の当たらない小屋裏の安全地帯を確保しています。様子を伺いに行ってみると、小屋の屋根が良い感じの角度で視界が東西南北に開けている。さすがはフカシロを隅々まで知る男。今後、小屋裏のポジションはフカシロに一番乗りした者だけに与えられるプラチナシートとなることが必定です。
私は一晩に一天体にもかかわらずまったく撮れ高がありません。しかたなく流れていてもマシな写真も採用してオリオン大星雲を仕上げました。それでも、なんとか形になっているのは、感度の良いカメラASI294MM Proのおかげでしょう。
冬の課題トラペジウムも、なんとか写りました。今回、実践した方法は記事にまとめました。
この日がどれくらいダメだったかというと、たとえば一番露出が長く、LRGB撮影の基本となるべきL画像コンポジットデータはこんな感じです。
ねじ込み不足でフィルターホイールが落下する様子を、お楽しみいただけるかと思います。
この後は失敗のまとめと対策を中心に記載しておきます。最初の事件は極軸あわせがすみ、導入、構図を決定し、撮影を開始したときです。
その夜におかした失敗とその対策
極軸あわせにミス。星が流れる
いつものようにPoleMasterを使って極軸をあわせました。次は天体導入です。今日はオリオン大星雲のため目盛環は必要とせず、一発で視野にいれることが可能。構図も何回かの試写を経て決定し、月のあるうちにHαの撮影をスタートしました。このとき20時30分。今日は順調です。異変に気づいたのは数枚撮影して仕上がりを確認したときでした。
「星が伸びてる」
何枚か撮影してやっぱりダメそうなので仕方なしに、最初から極軸合わせをやり直しました。補正レンズの関係で今回から288mmから432mmに焦点距離が長くなり、極軸あわせは精度が要求されていました(とはいっても400mmですが・・・)。月がしずむのは21時過ぎだったのでのんびりしていたのも失敗。なんやかんやしているうちに、小一時間が経ってしまいました。ようやく設定し直し、Rから撮り始めようとしたところに暴風がやってきます。おさまるまで2時間近く待たされました。月が出ているといっても、東は暗かったのでHαやRは撮れたはず。悔やまれます。
(対策)
これからは撮影中に極軸のずれが分かったときは、PoleMasterからやり直すのではなくドリフト法で微修正をする習慣をつけたく思います。例えば東の天体が南北にずれていたとき、まずは赤経方向にどちらかにちょっと少し回し、それで悪化したら反対方向に回す、という方法です。ユニテックの加曽利さんのブログによく、この光景が出てきます。これができるようになれば、望遠鏡を動かして構図を変えることなく撮影中も安心して微修正ができます。ノータッチガイドには必須のテクニックと思います。また撮影始めには、通常より長い時間の露出をしてチェックすることも試してみます。
フィルターホイールとカメラが回転していた
深夜1時を過ぎた頃から風もおさまり、安定的な撮影が可能になりました。当初はR→G→B→L→B→G→ Rの撮影を予定していましたが、RとGで暴風で時間を食ったため、Lで打ち止めです。RとGは風で大変でしたがBとLはクオリティは良さそう。ちょっとホッとしながら撤収を始めました。そのとき目に飛び込んできたのは・・・
「フィルターホイールがずれ落ちている」
フィルターホイールをしっかり止めなかったのか、締まりがゆるく重みで下に回転してしまっていました。カメラも一緒に回っています。1/4回転くらいなのでそれほど光軸方向に延びたわけでなくピントはまだマシそうですが、構図が壊滅的。それが上記の写真です。こんな状況でも無理して位置合わせしてくれたさすがのPixInsight。開発者に感謝です。
(対策)
ここでの教訓はネジをしっかりしめましょう、でしょうか。他にも微動ユニットがしっかりしまっていなかったこともあるので、撮影前にすべてのネジ部分を確認するようします。ただし締め過ぎは禁物。Twitterにはクランプの締め過ぎで変形したり折れたりする画像が数多く載っています。軽く締めて動いてしまうのは、どこかバランスが悪いのでしょう。
家でチェックしたら画像がぶれぶれ
自宅に帰って画像の確認をしたところ、ブレてしまった写真が多く、半分以上を捨てることになりました。RGBは30分しか撮影しなかったのでそれでは成り立たない。とくにRが合計で数分くらいになってしまいます。本当はRGBデータのクオリティも重要ですが、Lよりは許容されるでしょう。仕方なしにブレていてもまだマシな写真は採用することとし、全体の2/3を使うことにしました。暴風であったことや、いつもの焦点距離288mmより長い432mmであることもありますが、それより問題視したのは前後バランスです。
重いモノクロカメラとフィルターホイールを装着した結果、明らかに後ろ方向にバランスが偏っています。クランプをかなりキツく締めないとちょっとずつ鏡筒が上に上がってしまう。これはなんとかしなければなりません。
(対策)
これへの対策は・・・
鏡筒バンドとプレート導入
バランス対策として新たに鏡筒バンドとプレートを購入しました。Aramisさんが以前ブログに新しい鏡筒バンドのことを記載されていたのを思い出し、教えていただました。購入したのはK-ASTECの鏡筒バンドとプレートです。
https://www.kyoei-osaka.jp/SHOP/k-astec-tb80-60as.html
https://www.kyoei-osaka.jp/SHOP/k-astec-dp45-190l.htm
じゃ〜ん。
こ、これは天体撮影をはじまたころに「なんじゃ、この板みたいなやつ」と思ってみていたガチ勢のお姿。バランスとれてます。きゃー素敵。次回の撮影が待ち遠しい。
・・・と、まあいろいろ書きましたが、その日のフカシロはいつにも増して星空がきれい。誰すのすちさんのお友達のmejiroさんが豆から挽いて淹れてくださったコーヒーを冬の星座の下でいただくのは格別の美味さ。香りと味が本当に素晴らしかったです。次回もよろしくお願いします〜。
今回もやっぱり楽しい遠征でした。
<撮影データ>
2020年12月19日22時25分42秒〜
BORG 72FL + マルチフラットナー7108 (432mm, F6)
ASI294MM Pro
Astrodon LRGB Gen2 E-Series Tru-Balance Filters
Astrodon 5 nm Narrowband Filters – H-α 5nm
露出(すべて-10°C冷却, Bin1x1, gain 0)
R: 60秒x25枚
G: 60秒x22枚
B: 60秒x30枚
L: 5秒x68枚
L: 30秒x47枚
L: 60秒x43枚
総露出時間 2時間29分10秒
Unitec SWAT-310-Vspec
撮影地: 撮影地: 大月市七保町 深城ダム