全国の天文系サークルの大学生が集まるイベント「天文冬の陣 2025」にご招待いただいて、参加しました。素晴らしい会でした。北は北海道から、四国、九州の学生さんが70名以上集まった熱気あるイベントで「誰だ?若者の天文離れとか言ったのは!」と思うくらい盛り上がり、わくわくしっぱなしの2日間でした。

星見屋の南口さんと私はプラネタリウムでプレゼンしました。南口さんは長く天文をつづけるためのヒントについてお話をされました。私は画像処理の基本について、PixInsightのデモを交えつつ、しかしツールによらない天体画像処理の基本概念を解説しました。高価なPixInsightを購入しなくても、フリーソフトのSirilなどでも十分できることも説明しています(実際、PixInsightとSirilはかなり似ています)

私たちの講演のあとは、全国の大学生によるプラネタリウムでの星座解説です。星座解説は私もYouTube動画でよくやっていますので「私もプラネタリウム操作しながら、解説やりたいぞー」と軽いジェラシーを覚えつつ(笑)楽しく学生さんの解説を聞いていました。知らないネタも多く、楽しく聞きました。
心配された天気も、夜は23時くらいからスカッと雲がなくなり満点の星がキラキラでした。この日は私と星見屋さんでDWARF3とminiをあわせて4台持ち込んで撮影しました。また学生さんも撮影用から眼視用まで様々な機器を持ち込み、活気ある観望会になりました。
驚いたのはある学生さんの天体導入能力です。「M65、M66が見たいな」と誰かが言うと、倍率が80倍くらいの屈折望遠鏡をささっと動かして、ファインダーもなしにあっという間に導入しちゃうのです。レンズを覗いてみると本当に銀河が二つ入っています。望遠鏡の視野いっぱいに広がるそれは、私の持っている1640mmの望遠鏡にフルサイズカメラを付けた画角とほぼ同じで、その驚異の能力に驚かされました。その後も、天王星をサクッと入れて見せてくれました。
裾の広い天文活動
翌日は学生さんの発表があり、お手製の電波望遠鏡の話や、自作した星図の話など、話題がてんこ盛り。水素原子の21cm線を観測する機器がそんなに手軽につくれることも驚きでした。また自作の星図はネットが貧弱な観測地でも使えるようデータを圧縮するためのアプローチが素晴らしく、天文をやっていないと気がつかない方法もたくさん取り入れていました。
普段、私が活動しているフィールドは、天体写真、眼視、星景写真のだいたい3つの分野です。しかし天文冬の陣では、それより範囲が広く、電波望遠鏡といったアカデミックな内容や、星図やプラネタリウムの制作、プラネタリウムの解説など、範囲が広いのが印象的でした。特にアカデミックな内容は普段は縁遠いのでとても興味深いものでした。
写真展が熱い
会場では写真展も開催されました。
とくに目を引いたのは、初めて天体撮影したという写真や、まだ写真を始めて間もない方の撮った写真です。「わぁ写った!」というほとばしるような感動が写真から伝わってきました。その感動は私にもとても覚えがあり、周りの友人に見せびらかしていた記憶があります。

また風景と星の写真を別撮りした新星景写真もいくつか見られました。その作品たちは単にデジタル技術を駆使しただけではなく、美しい風景を撮るために足で稼いで良い構図を探して撮影した感じが伝わってくる素晴らしい写真ばかりでした。
私もプリントの楽しさを知ってもらおうと、A0、A1、A3の作品を持ち込み展示しました。

今回は表彰のための審査員もしました。どれも力作ぞろいで、私はとっても悩むことになりました。
その中でも選んだのは、天体写真からは2点で、高い撮影技術と画像処理でみんなのお手本となるようなM81, M82銀河の写真。もう一つは分子雲とすばるのバランスを崩さないように丁寧に画像処理したプレアデス星団です。また星景写真からも、皆既日食をとらえた写真を選びました。星景写真は西行法師が建立した三昧堂で撮影されており「西行が見たであろう皆既月食」を再現したものでした。私はこの作品を見て、杉本博司さんの海景シリーズを思い出しました。海景シリーズも古代人が見たであろう海を表現しています。
来年の天文冬の陣での写真展には「写真のタイトルをつけよう!」とみなさんにはアドバイスをしました。タイトルを付けることでテーマが生まれてきて、写真にひと工夫しようと思うと考えたからです。
いつまでも続いてほしい天文冬の陣
スポンサーさんからのサークルへの機材の提供もあり、その抽選会も開催されました。天リフの「天文機材バトンタッチプロジェクト」の機材抽選も一緒にしました。使っていない機材を学生さんに提供する企画です。どのサークルも慢性的に資金不足なので、これは素晴らしい企画でした。迂闊にも協力していなかった私。来年は使っていない機材を探してみます。

全国から学生の集まった参加者と運営委員の方も協力して、とても熱気あるイベントでした。会場選びも準備も大変だったと思います。運営委員の皆さんの熱意と力に脱帽です。学部の学生さんが中心なので、毎年、誰かに引き継ぎながら続けないといけない難しさもあると思います。しかし、こんな素晴らしいイベントはずっと続いてほしいと心から感じました。
またお誘いください!
