WBPP2.0でわかったバイアス、ダーク、フラットの関係 〜 PixInsightの画像処理

WBPP2.0として大きな進化をしたPixInsightの前処理。新機能がいろいろある中でも一番の強化はControl Panelです。ここでキャリブレーション方法を細かく指定できます。またCalibration Flow Diagramが素晴らしい。

とても便利なCalibration Flow Diagram
とても便利なCalibration Flow Diagram

WBPPはBias, Dark, Flat Dark, Flatフレームを駆使してキャリブレーションしますが、いまひとつどのタイミングで使われているかわかりにくいものでした。しかしこれを見ると一目瞭然・・というか、わたくし、勘違いをしていたことにも気づきました。

Twitterでの議論

ここ数日間、PixInsightのBias, DarkのトピックがTwitterで活発に議論されました。それに加えてだいこもんが解き明かした縮麺ノイズとOptimizeオプションの関係。私の中ではこれらが相互に関連しています。ひとまず話題となったことといえば・・・

  • DarkにBiasが含まれているのだから、Darkだけ引けば問題ないはず
  • ただしDarkのOptimizeオプションをつけた場合は、Bias量が変わってしまうから別々に引いた方が良い
  • DarkとLightの露出時間が異なるとき、Optimizeオプションは有効
  • Optimizeは問題を引き起こす場合がある。例えばアンプグローのように時間に比例しないノイズは消せなくなってしまう

こんなところを議論しています。もう少し知識を補完しようと思い、WBPP2.0を試したのと、WBPP2.0の解説を調べました。WBPP2.0の解説はAdam Blockさんのチュートリアルビデオが一番詳しかったです。彼はPixInsightのアンバサダーの一人で、EZ Star Reductionのロジックにも名前が出てきます(権威に弱い私)。WBPP2.0のビデオは12本ありましたが、とくにこの動画は詳しくて素晴らしい。

WBPP2.0のCalibrationフロー

WBPP2.0は次のようなフローでCalibrationをしています。FlatとLightの絵の周辺減光にこだわりを感じていただけると幸いです。

WBPPのCalibration Flow
WBPPのCalibration Flow

私が勘違いしていたというのは、WBPPでMaster Darkを作ったとき、Biasが引かれた状態であると思っていました。しかしWBPPのMaster DarkにはBiasが含まれています(だいこもんの上述の記事も読み直すと、ちゃんとそう書いてありました・・)

PixInsightのヘルプによると、Biasを引いたMaster Darkを作ると、ピクセル値がマイナスになるなど各種問題を引き起こすので、Masterを作るときにBiasを引いてはいけない。FlatやLightのキャリブレーションのときに引くように、と注意されます・・ていうか、わりときつめに怒られます。

BiasなしのMaster Darkはご法度
BiasなしのMaster Darkはご法度

実際に私の作ったMaster Darkを見てみるとちゃんとBiasノイズが乗っていました。

Master DarkにはBiasが含まれている
Master DarkにはBiasが含まれている

よくみると横方向に縞ノイズが見られますね。データはしっかり見ないといけないと反省です。

Optimize Master Darkは何が問題か

LightやFlatからDarkを引く際に、露出時間に違いがある場合はOptimize Master Darkオプションを活用することができます。これはDarkで引かれる長時間ノイズは露光時間に比例するためです。ちなみにOptimizeオプションは例えばLightが露出300秒でDarkが150秒ならDarkを2倍するというように単純に、露光時間に比例してDarkの値を変えているのではありません。長時間ノイズはちょっとしたセンサー温度の変動などで値は変わるためです。その代わりにWBPPはいったんそのままLightとDark、もしくはFlatとDarkの引き算をしてノイズレベルを調べ、Scaling Factorと呼ぶDarkの値を変更し、再度引き算をします。これを何度か繰り返してパラメータを設定しています。

Optimize Master Darkオプション
Optimize Master Darkオプション

こんな凝ったことをしているのですね。冷却CMOSカメラのように温度をコントロールできるカメラの場合でも、少量の温度変化に対応できるため便利な機能であると、PixInsightのドキュメントにも記載してあります。このサイトには同じ露出時間でLightが-10.0℃、Darkが-10.1℃と0.1℃の温度差でも効果がある写真が掲載されています(最初はどこの部分かよくわかりませんでしたが、拡大するとわかりました)。最近、Optimizeを悪く言ってて申し訳ない気分になりました。

しかしこの機能が裏目にでることがあります。Optimizeは露光時間や温度の差に対して係数をかけて処理しますが、露光時間に差があると長時間ノイズの出現量も違ってきます。1枚の画像のチェックでは気が付かないこともあるものの、位置合わせをしてIntegrationするとあちこちに増幅してしまう画像がこちらの動画でみることができます。英語ですが14:50あたりからの画像をみると分かりやすいかと思います。DarkではCosmetic Correctionは使えませんが、IntegrationのRejectionパラメータをコントロールすることでこれらのノイズは排除できます。しかし、パラメータのチューニングが必要となるため、簡単ではなさそうです。

他にも問題を引き起こす場合もあります。アンプグローです。Darkには露光時間に値が比例する長時間ノイズ以外に、露光時間で値が変わらないBias、露光時間で値は変わるが比例しないアンプグローがあります。

露光時間に比例するノイズ、しないノイズ

Optimize Master Darkを有効にすると、この露光時間に比例しないアンプグローが消せない場合があるのです。整理すると下記の場合に問題がおきます。

(1) Biasをひいていなかった場合
Bias分が正しい値より増減するため、FlatやLightにBiasのノイズが残ります。これはBiasを引けば良いので問題ではないですね。

(2)長時間ノイズの出現個数に違いが出た場合
長時間ノイズは輝度だけではなく出現個数も、露光時間によって変わります。、Optimizeオプションの係数が変わります。その結果、ノイズが消せない場合があります。とくに位置合わせしてIntegrationすると増加してしまいます。

(3)アンプグローがあった場合
露光時間に輝度が比例しないノイズの値が不正となるため、やはりノイズが残ります。アンプグローの問題はWBPP2.0のチュートリアルビデオに解説がありましたが、それを待つことなくそーなのかーさんとだいこもんさんが看破されていたのは、さすが!

Optimizeの問題はとくにFlatに顕著です。FlatはLightに比べて極端に露光時間が短くなることが多いためです。たとえばLight用の600秒のDarkを(ちょっと見栄を張りました。私は露出は120秒くらい)、3秒のFlatに適用すると単純計算でも1/200のScaling Factorがかかります。これが、初期のちょっとしたDarkでのエラーを増幅する結果になるのです。係数が小さくても引き算で効果がでてしまいます。FlatにはFlatと同じ露出時間のFlat Darkを用意するのが安心です。またFlat Darkがない場合は、Darkを使わずにBiasのみでFlatをキャリブレーションするのも比較的良い結果となるようです。

Biasは必要か

Master DarkにBiasが含まれているとわかると「ではBiasは必要なのか?」という疑問が生まれます。Darkを引けば同時にBiasも引かれるからです。いまのところわかっているのは、上述のOptimize Master Darkを使って輝度を変更した場合は、Biasも一緒に変更されてしまうのでその前にBiasを引いてやる必要があるということ。しかしDarkとLight, Flat DarkとFlatの露出時間が厳密に同じ場合は、Biasを使わなくてもDarkやFlat Darkに含まれるBiasを使えます。つまりDarkを引くことでBiasも引けるわけです。上述のWBPP2.0のチュートリアルビデオでも露出時間が同じDarkを使う場合はBiasは処理から外していました。とはいえ、一つひとつからBiasを引く方が間違いや予期せぬもんだいが少ない気がして、私は当面はBiasを毎回引く予定です。

WBPP2.0はまだ使い始めたばかりなので、この先まだ発見はありそうです。分かり次第レポートします!

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