地味かと思いきや・・・見どころいっぱいバーナードの銀河 NGC 6822

バーナードの銀河 NGC 6822とちっこい惑星状星雲 NGC 6818、斜めに走るIFN (高解像度版はこちら)

7月の初めから8月終わりまで、チリのリモート観測所で、ずっとバーナードの銀河と呼ばれる不規則銀河 NGC 6822を撮影していました。米国のバーナードさんが発見した銀河とのことです。銀河というと渦巻銀河であるアンドロメダのように、しっかりした構造をもつものをイメージしますが、この銀河は不規則銀河といって、銀河の中では小さめ(我々の住む銀河である天の川の10分の1くらい)で星の数も少なく、なんとなく成長できなかったやつです。天の川のすぐ近く、180万光年くらいの場所に位置しています。

モクモクとした雲があるらしいと聞きつけて、「たまにはこう地味なのも良いかな」と思って、軽い気持ちで撮影を始めました。ところが画像処理をしてみてびっくり。地味どころか見どころがいっぱい。画像処理もとても楽しいものでした。ひとつずつご紹介しましょう。

最初はやっぱり中央のバーナードの銀河から!

星がうまれるところ

赤い部分は星が活発に生まれるところ

青と赤のコントラストがとても綺麗な銀河です。よく見ると赤い領域がいたるところにあります。水素の電離ガスが近くの星に照らされて光っている領域です。星の形成活動が活発な証拠だそうです。天文ファンの中では赤ポチとか呼ばれます。

天の川をとりまくガスやチリ (IFN)

斜めに走るIFN

写真全体をみてみると、帯のようなものが斜めに走っているのがわかると思います(わかりやすいように星を消した画像を掲載します)。これはIFN (Integrated Flux Nebra)とか、シラス(Galactic Cirrus: 銀河巻雲)とか呼ばれる天体で、バーナード銀河の近くではなく、我々の天の川銀河を取り巻くように存在しているガスや塵です。天の川全体の光で照らされているのでIFNと呼ばれています。これまで私は2度、IFNを撮影しました(NGC 6744M81,M82近辺)。IFNに限っては、今回が一番綺麗に写せたかなって思います。

小さいのに存在感を放つ惑星状星雲 (NGC 6818)

緑に光The Little Gem Nebula (小さい宝石のような星雲)

写真の上の方には、The Little Gem Nebula (小さな宝石のような星雲)と呼ぶNGC 6818が光っています。これは惑星状星雲といって、星が一生を終えるときに吐き出したガスです。この写真では確認できませんが、惑星状星雲の中央にはその星がいるはずです。ズームでみると「に」という文字が見えます。これは、私の名前である「にわまさひこ」の「に」だと思われます。

最初、私はこれを星だと思って緑色を抜いて青く画像処理してしまっていました。緑の星は存在しないためです。しかし、友人のだいこもんが「変わった星がありますね」と発見してくれました。惑星状星雲と知って慌ててもとの緑色に戻しました。さすがのだいこもんです。業界ではこれを「さすこも」と言います。

・・・というわけで、「バーナードの銀河 NGC 6822とちっこい惑星状星雲 NGC 6818、斜めに走るIFN」でした(作品名、長っ!)。撮影に2ヶ月以上かけちゃったので、大丈夫かなって心配していましたが、手応え十分。実は、過去の私が撮った写真の中で一番のお気に入りです。

<撮影データ>
バーナードの銀河 NGC 6822とちっこい惑星状星雲 NGC 6818、斜めに走るIFN

2022年7月2日 〜 8月31日 
Takahashi FSQ-106N (530mm, F5)
Paramount ME
ASI1600MM Pro
Baader LRGB, Hα Filters
Autoguide – QHY5L-IIM / Baader Vario-Finder 60mm

露出(すべて-20°C冷却, Bin1x1, Gain 0, Offset 10)
 L: 300秒x493枚
 R: 300秒x190枚
 G: 300秒x178枚
 B: 300秒x168枚
 Ha:300秒x250枚
総露光時間 106時間35分

PixInsightにて画像処理

撮影地: チリ・ウルタド渓谷リモート撮影

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