前回のイータカリーナ星雲に続いて撮影したのはM83南の回転花火銀河です。我らがM101回転花火銀河に対抗して、南天のフィエイスオン銀河。英語で言うとSourthern Pinwheelです。「南の」とつけるあたりネーミングが北半球目線ですw。日本からでは高度が低く撮影難易度が高い天体ですが、そこは南米チリ。地平高度にして89度とほぼ天頂を通過し、チリの地の利を活かした撮影が可能です。南半球のファンからすると、イータカリーナとM83は初心者のときに最初に撮影する対象なんでしょうね。
贅沢をして、高度45度以上の状態のみでLRGB(59時間)とHα(7時間)で66時間露光しています。撮影したのは口径10cmのFSQ-106Nであるものの、さすがにこれだけ露光すると細かいところも写ってくれました。焦点距離も530mmですので、大幅にトリミングしています。全体ですとこんな感じ。
1ヶ月に1天体の撮影ペース
いまは1天体に1ヶ月強かけて、たっぷり露光しています。露光時間が多いのには理由があります。それは憧れ。天体写真を始めて気がついたことのひとつに、海外の写真は露光時間が長いことがあります。40時間は普通で100時間越えもざら。日本で真似をしようにも遠征スタイルではちょっと無理です。また晴れた夜もそれほど多くないため、絶対的な撮影チャンスが限られています。今回の乾燥地域に設置した望遠鏡では、長時間撮影をぜひやってみたいと思ったのです。
毎日の撮影は高度が45度以上になったところで開始し、45度以下に下がる前に終了します。日没から45度に上がるまでの時間は、先月撮影していた天体を最後の追い込みの撮影にあてています。今回の場合は前回までのイータカリーナ星雲を撮っていました。また45度より下がった後から日の出までは、つぎの新月期の対象を撮影始めます。いままさにメインで撮影中の巨大電波銀河ケンタウルス座Aを撮影していました。つまり一晩で、(1)先月の対象・(2)今月の対象・(3)来月の対象と、3天体を順繰りに撮影しています。また月が出ているときはHαです。
理想はぐるぐるばーんだが・・・
画像処理はまだ迷っています。私の天体撮影の原点は昨年3月に撮ったM51。ファインダー越しに渦巻き銀河が「ぐるぐるばーん」と写っていた時の感動はいまもくっきり覚えています。やっぱり渦巻銀河は巻いている姿が格好いい。そう考えると、今回の写真は細かいところは写っているものの銀河の渦巻くダイナミックさに欠けるのです。力強さを目指すも「くるくるしてますわよ♡」と優しいメルヘンな感じ。しかし南天の王者?M83はやっぱり、威風堂々した姿が似合う。
はてさて、どうしたものか・・・?
<撮影データ>
M83南の回転花火銀河 Photo by AstroCHL2JPN
2021年3月7日 〜 4月16日
Takahashi FSQ-106N (530mm, F5)
Takahashi EM-200
ASI1600MM Pro
Baader LRGB, Hα Filters
Autoguide – QHY5L-IIM / Baader Vario-Finder 60mm
露出(すべて-20°C冷却, Bin1x1)
L: 600秒x172枚
R: 600秒x56枚
G: 600秒x59枚
B: 600秒x64枚
Hα: 600秒x44枚
総露出時間 65時間50分
PixInsightにて画像処理
撮影地: チリ ウルタド渓谷(リモート撮影)
追記
明度を調整してメルヘン調を改善しました。冒頭の画像は改善後です。かなり迷走しましたが、良くなってると思います。たぶん。