先日撮影をしたNGC 1291は三重構造を持つ、とても不思議で美しい銀河でしたが、今回撮影したNGC 1398はそれに負けず劣らず、不思議で美しい銀河です。
前回公開したNGC 1291のことを真珠のようだとおっしゃってくださった方がいらっしゃいました。その時は特に意識していなかったのですが、このNGC 1398は中央の宝石感を意識して画像処理しています。実は最初のバージョンはもっと黄色の濃い黄金色でしたが、立体感と輝きを損なうという理由からやり直しをして真珠色に落ち着きました。
周りには幾重にも腕が巻いています。腕はフサフサとしたわらのようでもあり、丁寧に真珠を守っているようにも見えます。
この銀河はぱっとみると二重のリング銀河のように見えます。アウターリングのあるリング銀河と紹介している文献もありました。でもよく見ると棒渦巻銀河かと思います。中央に球(バルジ)があり、そこから棒が伸びて2本に腕になって硬く巻いています。中心部分は古い星のため黄色っぽく、また周辺は新しい星のため青く色づいています。地球からは6,500万光年離れた銀河です。
全体像はこちら。
写真をくまなくみてみると、たくさんの遠方銀河が写っています。
NGC 1398を彩る銀河たち
いくつか目立った銀河をピックアップしてみます。まずは中央のNGC 1398のちょっと下です。
仲良く渦巻銀河が並んでいます。下のPGC 13423はとても立派な渦巻銀河で彩色も豊かです。もっと大きな望遠鏡があればズームしてみてみたい。
次はこの二つ。中央のNGC 1398のちょっと右です。
左下のPGC 768878はフェイスオンの渦巻銀河ですね。右上のPGC 769908も同じく渦巻銀河なのでしょうか。ちょっと判別がつきません。
さらに右上に進むと、今回の写真の中で、わかる範囲では一番遠い銀河があります。。
土星の輪のような渦巻銀河PGC 138654は16億8000万年昔の光をとらえたものです。16億8000万年前は地球では先カンブリア紀で地球最古の「酸素発生型光合成生物」、シアノバクテリアが活躍していた頃だそうです。ネットには17億年前の藻類の化石の写真もありました!右下にもエッジオンの銀河が見られますが、名前はわかりませんでした。
最後にもう一つ。中央のNGC 1398の横にくっついているこれ。
芋虫のようなこれはなんでしょう?こんなに目立つ天体なのに調べても名前が見つかりません。他の方が撮影した写真にも載っているので、迷光の類でもないようです。不規則銀河ですかねー。
二重星もいました!
銀河の左には、星が二つ近くにいる二重星もいました!
反射望遠鏡のXの字の光条の片方が2本になっています。一瞬、「画像処理のミスか?」とヒヤッとしまいたが、調べてみたところ二重星でした。二重星には「見かけ状、近くにみえるだけで本当は遠くに離れている」ものと「お互いが重力で引き合って、お互いに回っている二連星」がありますが、これは後者の二連星もしくはそれ以上の連星のようです!
(追記)
芋虫のような謎の天体に関して、XでOHZAKI Hrokiさんから情報をいただきました!
WISEA J033833.43-262047.9という紫外線源(UvS – Ultraviolet Source)とのことです。日本天文学会の辞典によれば「生まれたばかりの大質量の星など、極めて高温度の天体から強い紫外線が放射される。紫外線を放射する天体を一般に紫外線源と呼ぶ」そうです。OHZAKIさん、貴重な情報をありがとうございます!!
<撮影データ>
2023年12月7日 〜 2024年1月8日
AG Optiral 10″ iDK (250mm, F6.7)
Astro-Physics 1100GTO-AE
オフアキシスガイド ASI174MM Mini
ASI6200MM Pro
CHROMA LRGB, Hα Filters
露出(すべて-10°C冷却, Bin1x1, Gain 100, Offset 50)
L: 300秒x330枚
R: 300秒x94枚
G: 300秒x100枚
B: 300秒x105枚
総露光時間 52時間25分
PixInsightにて画像処理
撮影地: チリ・ウルタド渓谷リモート撮影
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