ペンシル星雲を撮影しました。でもこれ、鉛筆というより羽根ペンです。中世の絵画に出てきそうなアレです。もしかしたら羽根ペンのことをpencilというのかな?と思って調べてみたのですが羽根ペンはquillでしした。quill pencilというものも存在していましたが、メジャーなものかはわかりません。謎は残ります。
ペンシル星雲は、私が昨年夏に開催した個展のメイン作品である「ほ座超新星残骸」の東の方に位置しています。ほ座超新星残骸は、もっと大きくて遠いガム星雲と重なっています。ほ座超新星残骸が約800光年先、ガム星雲は1300光年先の天体です。この写真の右の方のもやもやは、おそらくガム星雲だと思います。
個展のときは、ほ座超新星残骸のHα輝線を抽出しました。こちらのペンシル星雲はOIII輝線がやばいです(Hαとは水素原子が出す光、OIIIは酸素原子が出す光です。それぞれ専用のフィルターを使って撮影します)。
ズームしてみましょう。
めちゃめちゃ細かいです。この画像も作品化してみたいです。
ペンシル星雲はこの方法で計算するとだいたい3光年くらいの大きさです。Wikiによれば天体までの距離が815光年、時速64万4000キロで動いているそうです。よく「こういう星雲は形が変わらないの?」「爆発した姿を撮影できるのはワンチャンのラッキー?」と聞かれます。気になりますよね。計算してみました。
光速は秒速30万キロなので、60秒 x 60分 x 24時間 x 365日をかけると、年間に9兆4600億キロ動きます。ペンシル星雲は時速64万4000キロなので年間に56億キロ動きます。これは光速の0.06%くらいの速さです。ペンシル星雲が3光年の広がりがあるとすると、一年に全体に対して0.2%くらいしか動かないことになります。同じ方向に動いていたら形を変えませんし、反対方向に動いていても0.2 x 2 = 0.4%。10年で4%。それほど変わらないわけですね。
でも計算して知ったのですが、思ったよりも動いていました。30年くらい後の写真なら、ちょっと形が変わっていることがわかるかもしれませんね。
<撮影データ>
どちらかというと羽根ペンに見えるペンシル星雲
2024年2月4日 〜 2024年3月10日
AG Optiral 10″ iDK (250mm, F6.7)
Astro-Physics 1100GTO-AE
オフアキシスガイド ASI174MM Mini
ASI6200MM Pro
CHROMA RGB, SII, Hα, OIII Filters
露出(すべて-10°C冷却, Bin1x1, Gain 100, Offset 50)
R: 300秒x49枚
G: 300秒x60枚
B: 300秒x63枚
SII: 600秒x54枚
Hα: 600秒x50枚
OIII: 600秒x55枚
総露光時間 40時間50分
PixInsightにて画像処理
撮影地: チリ・ウルタド渓谷リモート撮影
#observatorioelsauce