(速報) ケンタウルスAのジェットを捉える

いまケンタウルスAの画像処理をしています。なかなかの難物で完成までにはまだまだ時間がかかりそうです。ケンタウルスAはガスが噴出しておりその電波を捉えようと宇宙兄弟では、シャロン月面天文台のファーストライトに選ばれたことで有名ですが、シャロンに先立つこと10年。処理の過程で銀河から吹き出しているジェットを捉えることができました。画像処理ができあがるまで我慢できなくなったので速報します!

ケンタウルスAから放出されたジェット
ケンタウルスAから放出されたジェット

画像の左上、北東方向に流れているのがそれです。アカデミックな世界でFUV(Far Ultra Violet)つまり遠紫外線で撮影されている映像は数多くありますが、Hαで全体を撮影された画像はレアかと思います(当社調べ)。

ジェットといってもプシュっと出たわけでなくて、この写真の端から端までで20万光年くらい。帯の長さは10万光年くらいなので、我々の天の川銀河くらいあります。どんだけ物質が出てるんや、と思っちゃいます。

2つのジェットを観測
(https://iopscience.iop.org/article/10.1088/0004-637X/802/2/88/metaをもとに筆者作成)

Inner FilamentはJet-A、Outer FilamentはJet-Bと呼ばれることもあります。近年、暗黒帯に隠された部分のJet-Cも観測されていますが、光学望遠鏡ではさすがに無理ですね。

ケンタウルスAは強い電波を発する電波銀河。中央部には太陽の数億倍の質量をもつぶっラックホールがあると言われています。銀河のくせにケンタウルスAという不思議な名前がついているのは、先に観測されたケンタウルス座からの強い電波源をケンタウルスAと呼んだからだそうです。それがNGC5128銀河であることが後から確認されたわけです。

天体画像処理は「引き算」

ジェットを映し出すためにHαはたっぷり33時間40分露光しています。写っているものの、ちとわかりにくい。

Hα画像

Rチャネルにはジェットは見ることはできません。

Rチャネル

ここでHαの画像のジェットを見やすくしてみます。Hα画像からR画像を差し引くことで、可視光の分を消しHα輝線だけにしました。Rは100nmのバンド幅、Hαは7nmのバンド幅です。輝線の強さも比例すると想定し、たすきがけで次の計算をしています。

ジェットの画像 = ((Hα x 100) – (R x 7)) / (100 – 7)

この式はHαをRGBにブレンドするとき、ブレンドもとのHαデータを作るためによく使われます。この式でも結果はよかったのですが、より綺麗にするためにあれこれ調整して最終的に7nmを6nmに変更しています。これを使ってHαからRをエイっと差し引くと、あら不思議、ジェットが浮かび上がってくるではありませんか。あまりにうまくいったので、最初は目を疑いました。感動です。

まさに天体写真の画像処理は「引き算」。今回は、不要な銀河の周辺の光芒(銀河に失礼ですね!)や星を引き算することでジェットが浮かび上がってきたわけです!

<撮影データ>
ケンタウルスAから放出されたジェット
2021年3月27日 〜 5月14日
Takahashi FSQ-106N (530mm, F5)
Takahashi EM-200
ASI1600MM Pro 
Baader LRGB, Hα Filters
Autoguide – QHY5L-IIM / Baader Vario-Finder 60mm
露出(すべて-20°C冷却, Bin1x1)
 Hα: 600秒x202枚 (33時間40分)
 R: 600秒x68枚 (11時間20分) 
PixInsightにて画像処理

撮影地: チリ・ウルタド渓谷

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