私はいわゆるガチ勢です。リモート撮影はいざ知らず、遠征の時も大きなピラーに大きめの赤道儀の重装備で遠征地に赴き、数時間の露光をして帰ってきます。
そんな私が宗旨替えして、軽量装備で54分露光で撮影したサドルとその周辺がこちら。

いっつもそんなことを言っている気もしますが、
「これ、めっちゃ楽しい!!」
焦点距離360mmと比較的広角な屈折望遠鏡にフルサイズのカメラで撮影しています。サドルから周りの星雲、そしてクレセント星雲まで構図に入りました。54分と短時間の露光にもかかわらず星雲の階調もちゃんと出て、星も綺麗な色になったとご満悦です!星の色に関しては最初に「星沼会スパルタ式レビュー」によってダメ出しを頂戴して、泣きながら画像処理をやりなおしました。
撮影に使った鏡筒はビクセンのSDP65SS (口径65mm、焦点距離360mm、F5.5)です。ビクセンのこのサイズの鏡筒といえばVSD70SSが話題ですが、弟分のSDP65SSも実力者でした。フルサイズの周辺まで星がまんまるですし、天の川の小さな星がビシッと写っています。写真をクリックすると拡大できますので、ぜひ周辺まで見てください!画像処理ではBXTやスターリダクションの各種テクニックは使っておらず、素直な処理をしています。
鏡筒はさすがにコンパクトで使いやすく楽々です。剛性もあり、全体にしっかりした作りの印象を持ちました。また、一般にこのサイズの屈折望遠鏡はピント合わせがシビアなことが多いので、オートフォーカスを使わずバーティノフマスクでピント合わせしましたが、ピントノブはぬるぬるっとしていてとても使いやすいものでいした。ピントは苦労せず一発で合わせることができました。
周辺光量も十分です。フラット撮影したところ中央が100%とするとフルサイズの周辺で94%くらいありました。これならフラットなくてもなんとかなるかも・・・と言いながらそこはガチ勢の私。フラットは必ず撮ると思います。でも周辺まで明るさがほぼ変わらないフラットなので、失敗することはなさそうです。
このSDP65SSはビクセンのご厚意で星沼会にお貸しいただいたものです。私はいつもの調子で「よし、一晩中たっぷり露光だ!」と張り切っていたものの、撮影を予定していた日は天気が悪く、撮影機会がない私はけっこう焦っていました。
仕方なくゴールデンウイークに家族と星を見に行った日に、機材を持って行きました。普段は家族と星見に行く時は眼視用の反射望遠鏡と双眼鏡だけで、撮影機材は持ち込まないことにしています。私の場合、車への搬送に小1時間、機材のセッティングに2時間(段取り悪い)、撮影中もオートガイドとにらめっこ。そのため家族と星見を楽しめなくなってしまいます。しかし、今回は背に腹は変えられず、コンパクトなAM5にSDP65SSをささっと載せ、モバイルバッテリーを使って54分露光をしました。54分という中途半端な時間なのは、ASIAIRに慣れていない私が、変なところをさわってうっかり撮影を終えてしまったからです。
はたして作戦はうまくいき、家族とおしゃべりしながら星見を十分に堪能しつつ、その片手間であっさり撮影に成功しました。現地滞在時間は3時間くらいで、サクッと帰ってきました。
さすがに露光時間が足りないだろうと次の新月期に同じ構図での撮り増しを予定していたのですが、梅雨に入ってしまい、結果としてSDP65SSでの撮影はこの54分がワンチャンでした。撮っておいてよかった〜。結果をあんまり期待をせず画像処理をはじめてみると、とってもよく写っています。PixInsightでの画像処理もとても楽しい。その結果が最初の写真です。
コンパクトな屈折望遠鏡と赤道儀で、ささっと撮影する楽しさを知ることができたのは、今回の大きな収穫でした。これなら、撮影を予定していなかった半月が出ている夜でも、晴れていたらちゃっと行って楽しんで帰ってくることができそう。こういう撮影スタイルも良いなあと再発見です。
機材を提供くださったビクセンに感謝いたします。ありがとうございました。
<撮影データ>
2025年5月5日 1時59分5秒 〜 2時51分12秒
SDP65SS (口径106mm F5)
ZWO ASIAIR
ZWO AM5
ASI290MMMini / ZWO 30F4 ミニスコープ ASIAIRでガイド
ASI6200MC Pro
露出(-10°C冷却, Bin1x1, Offset 50, gain 100)
180秒x18枚
露光時間 54分
PixInsightにて画像処理
撮影地: 千葉県大多喜町 平沢ダム