DSP (Deep Star Party) 2022に参加しました。2022年5月27日(金)〜29日(日)に愛知県のスターフォーレスト御園で開催された今年のDSP。私は配信スタッフとしての参加です。DSP 2022は観望をメインとした星空イベント。私にとってはオンラインではなくて、現地で開催される天文関連のイベントは初めての体験でした。日頃、天体撮影を中心の私にとって本格的な眼視観望・電視観望もこれまた初めてで、ドキドキでした。会場に昼過ぎに到着するとすでに多くの望遠鏡が設営されており、楽しい雰囲気に満ちていました。
今回はDSP 2022に参加して感じたこと、帰ってきてから思ったことをレポートします!観望経験が浅いため個別の話は間違いがありそうなので、全体的な感想が中心です。
(発見1) 個人パワーの炸裂
画像処理班である私は、新しい処理方法については日夜研鑽を重ね、新手法開発に勤しんでいますが(本当か?)、機器の工夫については、蹴らないように三脚に夜光シールを貼るとか、ケーブルをテープで止めるとかくらい。今回参加された観望派の方々は機器の制作、改造への熱量が半端ない。創意工夫をこらした機器が目白押しでした。ただものではない方々ばかりです。
目を見張ったのは、次のような会話があちこちであったことです。
「これ作ったんだよ」
「おおーすごい。売ってくれませんか」
「いいよ。〇〇円!」
ガチの方々を唸らせる製品開発を、個人でできるわけです。お話を聞いてみると「よく売れるよ。ヒット商品だと200個売れたこともある」とのこと。これは物凄いことです。通常の大企業ですと製品は数十万個から数百万個売れないと採算にあわずに商品化されない。一方で個人ならば数個から数十個でも元が取れる。背景には3Dプリンタだったり、小ロットでも対応してくれる製造委託の充実があるのでしょう。狭い天体の世界の話のようですが、いまの若い世代は万人向けの地上波のテレビ番組などは見ず、好みにより細分化されたYoutubeを見ています。天文に限らず全てのジャンルで大量消費の時代は終わり始め、細かいこだわりのオタク化が進んでいるのを感じます。そうなると100億円市場を追い求める大企業の居場所はなくなり、個人どうしが横でつながる時代に移っていく。そんなことを間近に感じた夜でした。
(発見2) 「こっちも見ていってよ〜」文化の心地よさ
普段は撮影し、画像処理している天体を自分の目でみるのは感動もの。
「すご〜い。リング星雲を初めて目で見ました。色がついてますね」
なんて騒いでみると、あちこちから
「こっちもM57をいれたよ(リング星雲が見られるよ)。見てってよ」
「こっちもいれたよ〜」
「こっちも〜」
お祭りで屋台から声をかけられる感じと似ています。これが実に楽しい。私もだんだん慣れてきて、「すご〜い」ばっかりではなくて、「これはコントラストが高くて、解像感ありますね」なんて、さっき聞いてきたばかりのコメントを披露してみます。そうすると「そうでしょ〜。ここの部品をね、今年はこう改造していて・・・」というお話が聞けます。それが滅法楽しい。機器を出展している方にとっても、フルスイングで自慢できるハレの場なんだと思います。見る人も見せる人もハッピーな快適な空間でした。
天体写真でも私は「これ見て!」っていつもやっています。天体写真に詳しくない人たちには珍しいようで、とっても盛り上がってくれます。そうすると「星を見に連れていって」となります。そこで観望隊に登場いただければ、天文に興味を持つ人を増やせそうです。「写真で過剰気味になったイメージのまま観望に連れていくと、写真ほど派手ではない眼視との落差は大丈夫か」といった心配は不要と思います。先日も私が鎌倉で友人らと飲んでいたときに、自分の天体写真でさんざん盛り上げ、「生で見たい」という話になりました。そのまま13cmの反射望遠鏡を積んだ車で近くの海岸に星を見に行きました。私は酒を飲まずに虎視眈々とその機会を狙っていたんです。星座の説明や、いま見ている天体からの光が何光年という話をしたところ、大盛り上がりで、全員終電を逃して夜更けまで見ていました。
(発見3) 双眼のすごさ
会場には両目で観測できる機器がたくさんありました。双眼の素晴らしさは聞いていたものの、あれほどまでとは・・・。
片方の目で見る望遠鏡は、地上から遠くの天体をズームで見ている感覚です。「あんな遠い天体が、こんなに近くに見える!」という感動が勝負。一方で双眼の場合は、「宇宙空間に包み込まれる」感覚がありました。頭の中に画像が広がるので、自分が地上にいるのを一瞬忘れて、天体の近くまでワープしたような感じがします。これは経験した方が良い。両目で見ると、人間が進化の過程では見たことのない画像なので、脳が何か勘違いをしてそうさせるのかもしれません。
じゃあ、片方の目で見る望遠鏡はというと、じっくり天体を観察するのは片方の目もなかなか良い。要するに両方欲しくなるという問題を抱えました。いまは双眼鏡を物色しています。
(発見4) 天文施設は快適
お世話になった「スターフォーレスト御園」はとても快適でした。天文に特化した施設なので「宿泊所で灯りをつけても観測地に光が届かないようにしている」など、随所に星を見るための工夫がありました。また、屋外の個人利用できる小部屋タイプの天体観測所がたくさんあったり、整備された機材も豊富。魅力たっぷりの施設でした。
天体撮影・観測をするものにとって宿泊施設はなかなか難しい問題です。宿泊地の近くで天体観測できなかったり、翌日が10時チェックアウトだったり。結局、宿をとっていても結局あまり滞在していなそうで、これまで活用することはあまりありませんでした。スターフォーレスト御園をはじめ、こういった天体観測に適した施設を活用すると、天文ライフがとても快適になりそうです。
来年もぜひ参加したい。開催のスタッフの方々、参加者のみなさま、ありがとうございました!今年はバタバタだった配信も、来年は経験を積んで、よりバタバタにしたいと思います。