私はモネの絵画が好きです。とくに睡蓮の一連の作品の光の移りゆく様は、ずっと見ていても飽きません。モネに限らず印象派の画家はみんな好きで、その中でもモネの作品は別格です。
もともと絵画ファンというわけではなく、いまも有名な画家の作品を見るくらいです。数年前までは海外出張が割と多くありました。週末をまたいだ出張の土日にやることがなく、なんとなしに美術館に行くようになったのが絵画を見るようになった始まりです。最初はボストン美術館だったように記憶しています。モネ、ルノワール、マネ、セザンヌ、ゴッホと印象派、ポスト印象派の強烈な作品が目白押し。私なりに衝撃をうけてずっと見ていました。それ以来、時間を見つけては美術館巡りをしています。ちなみにボストン美術館所蔵のゴーギャンの有名な「われわれはどこから来たのか、われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」は楽しみにしていたのに、残念ながら外の美術館に貸し出し中でした。
私が天体写真の、とくに星雲の写真を画像処理するときは、けっこうこれら画家の作品の影響を受けています。星雲も印象派の絵画も、反射する光の変わりゆく様が命。天体写真は、写真ではあるもののカラーバランスにはある程度の調整余地がありますし構図も大切。「絵画を参考にしたって良いじゃないか!」って私は思っています。
これまでの私の天体写真と絵画の関係を解説を試みてみます! 半分マジ、半分お遊びの後付け講釈ですので、お気軽に読んでください〜。(なお文中に使用した絵画はパブリックドメインの画像を使用しています)
モネのマネ
構図にこだわり遠近感を表現したM4とNGC 6144。これは私の中でもお気に入りの作品です。
これはモネの「印象・日の出」を真似しています。
え、似ていないって? 実はM4の写真を撮影していたときは、上下逆さまにして撮影していました。最初の写真をひっくり返してみましょう。
球状星団と朝日。斜めにパースを効かせた星雲とボートが行く様は、構図が一緒です。この撮影と画像処理で、うまくやれば天体写真も立体感を表現できると気がつきました。
気分はゴッホ
干潟星雲と三裂星雲はゴッホを意識しました。
これまでゴッホはあちこちでたくさん見ています。教科書で見たゴッホはピンときませんでしたが、実物を見たらしびれました。あの黄色!迫ってくるような色使いです。モネと違い、私の写真がどの絵画と似ているというわけではなくて、色使いなど雰囲気を意識ました。気分はゴッホというわけです。
この「赤い葡萄畑」はゴッホの生前に売れた唯一の作品だそうです。
干潟星雲と三裂星雲は「天の川部分がもっと赤っぽい方が良いのでは」というご意見もいただきましたが、ここは自分を信じて黄色めに仕上げました。また私としては、過去に経験のないくらい色を強めています。とても気に入っています。
ゴッホの「種をまく人」の黄色い太陽も強い印象をあたえます。
ちなみに、この「種まく人」の枝の感じは、広重の亀戸梅屋敷の枝の感じにそっくりです。こちらが広重の亀戸梅屋敷です。
枝の感じが似ていますよね。ちなみに、亀戸梅屋敷そのものもゴッホは模写しています。
亀戸梅屋敷の遠近表現にゴッホもしびれたんじゃないでしょうか。漢字がかわいいです。ゴッホは浮世絵の模写をたくさん残しています。数年前に東京でやっていた広重展でゴッホの浮世絵の模写をたくさん見て驚きました。ちょっと誇らしい気持ちになります。
フェルメールの青
このタランチュラ星雲は中央部分の青にこだわりました。また大マゼラン雲の星々の青さも大事なポイントです。
青といえばなんといってもフェルメール。モネやゴッホが19世紀の画家なのに対して、フェルメールは少し古い17世紀の画家です。
黒を背景にターバンの青が鮮やかです。
「牛乳を注ぐ女」はアムステルダムで見ることできました。普通の日常生活と鮮烈な青の対比が衝撃的です。フェルメールという人は、日常生活を描くのに長けた人なんですね。
ちなみにこの青の顔料は貴重な素材です。調べたところラピスラズリという宝石で、当時グラムあたりの価格が金にも匹敵するとのこと。パトロンがついていたので、そんな創作活動もできたそうです。
・・・ということで、嘘か本当か後付けか。私の天体写真と絵画の関係でした。いつか、モネの睡蓮のような天体写真を撮る機会をうかがっています。