生活が一変した一年でした。
このように書くと自粛を余儀なくされる生活スタイルのことを指しそうですが、そうではありません。天体写真です。
昨年に一眼カメラを手にしてから星景写真を始めました。転機は一年前の12月にSWAT-310V-Specを買ったとき。広角カメラにはもったいないこのポータブル赤道儀。SWATを選んだのは、将来のステップアップも意識したからなのですが、何か感じるものもあったのだと思います。
3月: SWATに13cm反射望遠鏡を載せる
いつか望遠鏡をと思っていた矢先、子供と星の観望に使っていた13cmの反射鏡(Vixen R130Sf)を力持ちのSWATに載せることを思いつきます。3月になってウェイトなど必要な機材を揃え、いつも星を眺めにいく三浦に向かいました。最初はマルカリアンチェーンを撮影。「小さいながらも銀河がそれなりに写っているな」と確認し、東京の光も明るい北の空に望遠鏡を向けました。M51子持ち銀河の撮影です。私の事前の予想は渦巻らしきものがうっすらと写ること。子持ちの子供銀河の方は判別できたらラッキーくらいに思っていました。
90秒の露出を終えてカメラの液晶パネルに銀河らしきものが映っています。焦点距離650mmではカメラの小さな液晶には銀河は小さく、ズーム表示しました。その瞬間・・・。この光景と感動は忘れられません。子供の銀河を従えた見事な渦巻状の銀河が写っていたのです。
「こんなに写っちゃうのか・・・」
夢中で撮影をつづけ、自宅に帰ってネットを調べながらPixInsightで処理しました。この子持ち銀河は私のブログ記事の中でもアクセスの多い「Pixinsightの基本フロー」の説明に使用しています。いまとなってはアラが目立ちますが記念碑的にそのままにしています。PixInsightのことは旅行で知り合ったチリ人のアマチュア天体写真家に紹介してもらい、昨年に購入していました。購入の過程でステライメージも知りましたが「どれも同じだろう」とPixInsightを買ったのを覚えています。しかし星景写真に使うには難しく、そのまま放置していたのがやっと役に立ちました。
4月: ブログ「たのしい天体観測」をスタート。Twitterも始める
天体写真と並行してスタートしたのがブログです。覚え始めたPixInsightの使い方をどこかに残しておこうと思いたち、せっかくならブログにしてみようと始めました。どうせだからとドメインも取得し、順風満帆なスタート・・・のはずもなく、最初の1ヶ月は週のアクセスが5件。そのうち自分でアクセスしたのが3件という状態が続きました。残りも謎の海外からの無作為っぽいアクセスだったりします。
結局、最初の1ヶ月は天体にあまり興味のない私の知人がのぞいてくれるくらいで、閑古鳥が鳴いていました。アクセス数を追いかけたかったわけではないものの、誰にも読んでもらえないのも切ない。どうしたものかと考え、とりあえずTwitterのアカウントを作ってみました。これが二つ目の転機です。おっかなびっくりのTwitter開始で、アカウント名もそのまま実名です。いまさら匿名に変えるのもなんなのでそのままにしています。
Twitterを始めてびっくり。世の中には天体写真をやる人がこんなにいるのか。それもめっちゃディープ。これまでとまったく違う世界が広がっていました。生活環境や価値観、職業や年齢などと全く関係なく「星空が好き」の一点により繋がる友人とのコミュニケーションの楽しさを知ることになります。天リフのおかげもありブログを見てくださる方も少しずつ増えてきました。
ブログのPixInsightの解説はやって良かったことの一つです。記事を書くために自分も調べるということももちろんですが、読んでもらうことで「私はこうしているよ」という意見をいただくことができ、プロセスの改善に役立っています。記事が凝りすぎなのは、やっているうちに一人で盛り上がってしまうから。これまで気がつかなかった自分の一面ですが、ブログの記事を書くことがなぜだかストレス発散できる実に楽しい時間になっています。ひたすら調べごとをするのが好きということもあります。
この頃、歯車が噛み合った(歯車が狂った?)手応えを感じていました。
6月 〜 BORG購入。11月冷却CMOSモノクロカメラ購入
あとは、坂を転がるがる小石の如し。6月にBORG72FLを購入し四国・天狗高原への撮影旅行も経験しました。それまでの非改造機ではだんだん物足りなくなり11月には、冷却CMOSモノクロカメラASI294MM Proも購入しました。Twitterで知り合った方と現場で直接お会いする楽しさを知ったのもこのころです。
私にとっていまの状況は「よくぞ、こんなに楽しいことが人生に手付かずで残っていたものだ」と感じさせます。なんでこんなにハマってしまったのか。理由はわかっています。これまで私が好きだった要素が全部入っているのです。
- 星・宇宙
- コンピューター
- 道具
- 文章を書くこと
どれひとつとっても自分が好きと自認してきたものばかり。それが束になってやってきました。夢中にならないわけはありません。先日は木星・土星をみるため栃木の客先まで反射望遠鏡を持っていく暴挙に出ました。月の満ち欠けによって全ての予定が決まる、という生活が定着した一年でもありました。
2021年のめあて
来年はどんな年になるでしょうか。2021年の目標を立ててみました(たのしい天体観測なので、目標よりめあての方が似合います)。
(1) プチワーケーションにチャレンジする
いまの仕事は自宅中心です。それならワーケーションもできるはず。ガチなワーケーションは荷が重いのでプチとしました。たとえば木曜の夜に遠征にでかけ、金曜の日中は宿で仕事をした後、週末の金・土に撮影するようなプランです。本当は平日に撮影したいのですが平日の夜にやると、翌日の私は使い物になりません。そう思っていると完璧な場所がありました・・・。ハワイです。日本の17時はホノルルの22時。日本の23時がホノルルの朝4時。仕事終わりがちょうど深夜になります。それなら毎日撮影できる・・・。これは将来のチャレンジとしましょう。まずはプチワーケーションです。
(2) 撮影技術を高める
いまの私の知識、経験は画像処理に偏っています。一方で撮影はトラブルつづき。トラブルは起きるものとしても、そのリカバリーがうまくできません。先日も極軸が少しずれていたのか、導入後の試写の段階で星が流れており、仕方なく極軸合わせと天体導入をやり直して小1時間を無駄にしました。ユニテックの加曽利さんのブログを拝見していると「星が南に流れたので、方位ねじを少し回した」というような記載をよく見かけます。なんて格好いい。こういう天体、機材の知識をフルに活かして臨機応変な対応ができるようになりたいのです。
(3) ブログのPixInsight記事を整理する
PixInsightの記事が増えてきました。いまは記事を書いた順に並べていますが、いかにも見にくい。何らかの方法で整理したいと考えています。WBPPなど処理名ごとに分けるのも全部揃っているリファレンスガイドではないので使いやすいとは言えない。何が良いのでしょう?なにか調べるときの目的のようなもので分けられると良いなあと思っています。
(番外) 長焦点を始める?
これは未定です。いまのレデューサー装着で288mm、フラットナーで400mmのBORG 72FLもまだ使いこなしているとは言いがたい私ですから、手を出すのはまだ早いと思っています。しかし最初の撮影がM51だったこともあり銀河にはとても憧れる・・・。気長に考えてみます。
来年も皆様がたのしい天文ライフを送れますように!
<2020年 活動記録>
- 1月5日 山中湖 しぶんぎ流星群
- 2月8日 神奈川県横浜市 水星
- 2月23日 神奈川県三浦市城ヶ島 さそり座、オリオン座
- 3月22日 神奈川県三浦市 マルカリアンチェーン、M51子持ち銀河 (初の望遠鏡を使った天体撮影)
- 4月18日 千葉県大多喜町 M101回転花火銀河(練習)
- 4月25日 千葉県大多喜町 しし座三つ子銀河、M101回転花火銀河
- 5月30日 神奈川県横浜市 M8干潟星雲
- 7月11日 神奈川県横浜市 ネオワイズ彗星(失敗)
- 7月18日 神奈川県横浜市 ネオワイズ彗星(失敗)
- 7月19日 神奈川県三浦市 ネオワイズ彗星(初観測)
- 7月22日 神奈川県三浦市 ネオワイズ彗星
- 7月27日 千葉県館山市 ネオワイズ彗星(ほんの一瞬)
- 8月1日 神奈川県三浦市 北アメリカ星雲、ペリカン星雲 (BORG 72FLデビュー)
- 8月15日 千葉県大多喜町 網状星雲(遠征の練習)
- 8月18日 高知県天狗高原 網状星雲、M31アンドロメダ銀河
- 9月13日、18日 神奈川県横浜市 カルフォルニア星雲
- 9月19日 神奈川県横浜市 クエスチョンマーク星雲(チョンがはいらず失敗)
- 9月24日 千葉県大多喜町 クエスチョンマーク星雲
- 10月25日 千葉県大多喜町 ハート星雲、ソウル星雲
- 11月14日 山梨県深城ダム ハート星雲 (ASI294MM Proデビュー 初のLRGB撮影)
- 11月21日 山梨県深城ダム 馬頭星雲
- 12月13日 千葉県大多喜町 ふたご座流星群
- 12月19日 山梨県深城ダム M42オリオン大星雲
- 12月22日 栃木県宇都宮市 木星・土星大接近